(2)反射法地震探査の原理とCMP重合法

@反射法地震探査の原理

反射法地震探査とは、異なる弾性波速度(P波・S波速度)を持つ2つの地層の境界では、上方から入射した弾性波の1部が反射して地表に戻ってくる性質を利用して、地盤の地質構造を求める調査方法である。

図2−4−4に示すように、震源(↓)の近傍に地震計(□)を置き起震すると、発生した弾性波は各地層境界で反射して、地表に戻ってきて地震計に記録される。図2−4−4のように、起震点・受震点を少しづつ移動しながらこの観測を繰り返すと、図2−4−5に示すような反射記録が得られる。

図2−4−4 反射法探査概念図  震源(↓) 地震計(□)

図2−4−5 反射記録概念図

反射波は、地層境界の深さと各地層の弾性波速度で定まる時間遅れで地表に置いた地震計に戻るため、記録を並べると地層形状を再現することが出来る。図2−4−5の反射記録は、弾性波の各地層境界までの往復時間(往復走時と呼ぶ)を縦軸にして示しているが(時間断面;time section と呼ぶ)、各地層の弾性波速度がわかれば、縦軸を深度にした断面図を作ることが出来る(深度断面;depth section と呼ばれる)。

A反射波の振幅と地層の速度構造

反射波を表示する際の位相は通常は図2−4−6に示すように、低速度層から高速度層に波が入射する際に発生する反射波を右に立ち上がるように描き、黒く塗りつぶして示す。

反射波の振幅は、速度差が大きい境界面ほど大きくなり、また使用できる波の周波数により地層の分解能も異なる。この様子を図2−4−7図2−4−8に示す。

図2−4−6 反射記録の表示方法

図2−4−7 探査に使用する波の波長と得られる反射記録

図2−4−8 各地層境界から発生する反射波と地表で得られる観測記録

BCMP重合法

実際の観測記録では、上述の1震源点・1受震点の観測方法ではノイズが多く、一般的には良好な反射断面を得ることが出来ない。そこで、最近の反射法地震探査では次に述べるCMP重合法が用いられている。

震源点と受震点の中点が共通で、震央距離(震源点から受震点までの距離)が様々である反射記録の集まりを考える(CMPアンサンブル;図2−4−9)。この共通の中点をCMP(Common Middle Point;共通反射点)と呼ぶ。図2−4−5に示したような震央距離が零の記録を、normal timeの記録と呼ぶが、各地層の弾性波速度が分かれば、震央距離が零でない記録を補正して normal timeの記録に戻すことが出来る。この補正をNMO補正(Normal Move Out correction)と呼ぶ。

CMP重合法における解析手順は概略次のようになる(図2−4−10)。

イ. 観測記録の中から、CMPを共有する記録を集める(CMP編集)。

ロ. CMPを共有する記録を用いて、各地層の弾性波速度を推定する(速度解析)。

ハ. 速度解析結果を用いて、各記録をNMO補正し normal time の記録に直す。

ニ. CMPを共有する記録を、全て足し合わせて1本の記録にする(重合)。

図2−4−10 CMP重合法

このとき加え合わせる記録の数がm本であればm重合と呼ばれる。この処理を行うことにより反射波は強調され、他のノイズは減衰する。とくにノイズがランダムであれば、√m倍のS/N比の向上が期待できる。 

図2−4−9 CMPアンサンブル