1−1−7 調査項目

(調査フロー、調査数量はそれぞれ図1−1−1表1−1−1に示す。)

(1) 地形地質調査

ア.文献調査

文献調査は、長尾断層および鮎滝断層に関連する既存の資料・論文を収集・解析し、長尾断層の位置、断層露頭、活動性、周辺の地形・地質に関する概要を把握する。

イ.空中写真判読調査

空中写真判読調査では、断層変位地形の可能性のあるリニアメントおよび指標となる地形面を抽出、分類し、2万5千分の1リニアメント図を作成する。

ウ.地表踏査(概査)

各断層にそって地表踏査(概査)を実施し、地形面構成層および基盤地質の分類・対比を行い、また、断層変位地形については確証調査を行い、活断層の存在を確認した上、断層の長さ、連続性、変位量などを把握するとともに、精査調査の調査地点を選定する。

調査の際は、露頭および地形等を記録するとともに、それらの写真撮影を行い、また、炭素同位体年代測定試料、火山灰、微化石試料等、年代推定に必要な試料が得られた場合は、採取する。

エ.地表踏査(精査)

各断層にそって地表踏査(精査)を実施し、断層変位地形については簡易測量を行うとともに、トレンチ調査等の調査地点を選定する。

地表踏査(概査)の成果は、2万5千分の1の地形分類図および活断層詳細図として整理する。また、地表踏査(精査)の成果は、2千5百分の1の地形分類図および活断層詳細図としてまとめる。

(2)物理探査

地形地質調査によって抽出されたトレンチ調査候補地点を対象に物理探査を行い、トレンチ調査地点の絞り込みを行う。

ア.反射法地震探査

反射法地震探査では、油圧インパクターによって花崗岩基盤から地表までの長尾断層の地質構造を把握するため、探査深度目標を200mとして、長尾断層を南北に横断して、500m級の測線を4本程度設置する。反射法地震探査は以下の要領で行う。

○計画測線上において、受震点および発震点位置の3次元座標(X,Y,Z)を測量する。

○反射法の測定は一つの震源点に対して、いくつかの受震点に地震計を並べて行う。1点の測定では、油圧インパクターによって数回の発震を行い、それを1回毎に加算(スタック)して、最後にMTに収録する。このような測定を発震点・受震点共にある一定間隔で移動しながら繰り返す。

○測定データは重合処理などを行い、解析結果を音響断層図としてまとめ、また、音響解釈断面図を作成する。

イ.比抵抗映像法電気探査

○比抵抗映像法電気探査では、堆積物下の長尾断層の位置を把握し、トレンチ調査地点を選定するために、400m程度の測線を4本程度実施する。

○計画測線の測量を行い、電極の位置、標高を示した平面図を作成する。

○比抵抗映像法電気探査は、二極法配置を用いた測定で、電極間隔を10m以内として、現地状況に合わせて実施する。

○測定データは、適切な方法によって解析し、地下の2次元比抵抗断面図を表示し、比抵抗解釈断面図を作成する。

(3)ボーリング調査

断層位置の特定と、断層の地下での規模を把握するため、オールコアボーリングを掘削し、年代推定に必要な試料を得る。

掘削深度は20m程度、採取コア直径は原則50mm以上とし、掘削工法は、地層の変化に応じてコア採取率を十分に満たせる有効な方法を用いる。

また、最寄りの基準点または独立標高点からの水準測量により、各ボーリング孔の標高を求め、調査実施箇所とともに、ボーリング地点図に表す。

採取したコアおよび試料について、以下の処理・分析を行う。

○コアの写真撮影

採取したコアを1m毎に区切ってコア箱に納め、写真撮影を行う。

○柱状図の作成

コアについて、縮尺20分の1の柱状図を作成し、層相、粒度、固結度、堆積構造変形構造等について記録する。

○分析用試料の採取

コアから、年代推定に必要な試料を採取する。採取した試料は、試料の種類毎に分類し、ボーリング番号、採取深度等を記載したポリ袋に封入する。

○汎用試料の採取

残りのコアは、委員会の指示に基づいて、処理・保管する。

○試料の分析・測定

得られた試料をもとに、年代推定のための分析・測定を行う。

○物理探査およびボーリング調査に基づく、調査地点の断面図を作成する。

(4)トレンチ調査

最近の地質時代における断層変位の有無を確認し、年代推定に必要な試料を得て、最近の活動年代、活動間隔(周期)および単位変位量などを明らかにするため、トレンチ調査を以下の手順で実施する。

○調査実施地点、調査用地境界の選定

これまでの調査結果と地域の土地利用状況等を考慮し、トレンチ調査実施地点、調査用地の境界を選定する。

○調査用地の平板測量

平板測量により、調査用地の200分の1平面図を作成する。平面図には、土地利用状況を正確に記載する。

○トレンチの掘削

掘削箇所および掘削残土の保管場所を定めたうえで、所定の規模のトレンチを掘削する。

掘削の最終段階では、後述の法面整形が容易に行えるよう、掘削面を平板に整える。

○掘削法面の整形

掘削した法面は、地質の観察ができるよう、人力で平滑に整形する。

○グリッドの設置

整形した法面に、観察、スケッチの座標として、水糸等で1mのグリッドを設ける。

○法面の地質観察および記録

整形した法面の地質を詳細に観察し、縮尺20分の1のスケッチ図およびその解釈図を作成する。

○試料の採取、分析・測定

断層変位時期の年代推定に必要な試料を採取する。

得られた試料をもとに、年代推定のための分析・測定を行う。

○トレンチの平板測量

平板測量により、トレンチの位置、形状および法面の位置、形状を示した縮尺100分の1の平面図を作成する。

○埋め戻し・用地の復旧

掘削残土を十分に転圧し、つき固めながら埋め戻すなど、十分な措置を講ずる。

(5)総合解析の検討

以上の調査結果を総合的に比較解析して、断層の分布、活動度、活動の再来間隔、最 新活動時期、単位変位量等について分析し、地震危険度に対する評価を行う。