9−1−3 出店断層帯の総合評価

出店断層帯について、平成8年度以降にトレンチ調査・地形断面測量・年代測定を実施した。現段階までの調査結果をもとに出店断層帯を評価すると、以下の通りである。

(1) 野崎トレンチと新夏油トレンチでは段丘礫層の撓み変形は確認できたが断層や亀裂など断層活動時期を限定できる現象は確認できなかった。最新イベントの年代は不明である。

(2) 地形断面測量によると、L段丘の鉛直変位は胆沢川扇状地で5m、夏油川で6.5〜7.5mであり、L’段丘では2mあるいは2m以上、A段丘では2mであった。また、段丘開析谷底には変位が認められなかった。L段丘の14C年代は約1.5 万年前、L’段丘の14C年代は約7,000年前である。A段丘面の年代は7,000年前より若いが、年代測定サンプルが得られていない。いずれにせよ完新世のA段丘の鉛直変位量である約2mが単位変位量(鉛直)の可能性がある。

(3) 出店断層帯の長さは現段階では未確定であるが、断層地形の明瞭さや連続性基づけば、北上市岩崎新田付近から胆沢町駒籠付近まで(約24km)が 一連のセグメントの可能性が高いと考えられる。

(4) 松田(1975)に基づけば、起震断層の長さから単位変位量は約2.0mと求められる。