9 まとめ

これまでの調査で花巻断層帯・北上断層帯・雫石盆地西縁断層帯の調査が行われている。すでに実施された調査内容は文献調査、地形・地質調査、ボーリング調査(135m)、トレンチ調査(4箇所) である。その結果、花巻市北湯口トレンチにおいては、約5000年前に活動した断層が確認されたり、断層地形の明瞭な箇所での変位量の地形断面測量がなされ、地表付近における断層変位はある程度わかってきた。

そこで、本調査では花巻断層帯と北上西断層帯の地下構造を推定するために、P波物理探査を行うことにした。P波物理探査は石鳥谷測線(2600m) 、北湯口測線(500m)、横森山測線(1680m) で実施し、深度200〜500mまでの地下構造についての情報を得ることができた(本文2章)。

また一方、花巻断層帯・北上断層帯の南方延長には文献によって出店断層帯の存在が知られている(図9−1)。この出店断層帯については、これまで、調査が十分になされておらず、その活動周期、最新活動など不明である。出店断層帯を含めて北上低地の西縁に連なる花巻断層帯・北上断層帯を通じての断層セグメンテーションの問題についても、十分に議論できる資料がない。

そこで、今回は出店断層帯の一次調査として文献調査、地形・地質調査、ボーリング調査(20m) を実施し、トレンチ調査の候補地点を選定した。トレンチ調査の候補地点はA:金ケ崎町野崎、 B:金ケ崎町天狗森、 C:金ケ崎町橇引沢、 D:金ケ崎町千貫石の4 箇所である(図9−2、本文7章)。このうちA:金ケ崎町野崎ではボーリング調査によって深度6mの地点で段丘礫層を変位させる断層が確認できた(本文6章)。