金沢層は黒沢川河岸や支流の河床で露出が良い。下位の凝灰質シルト・砂岩・礫岩の互層(亜炭層や軽石質凝灰岩層を挟む)と上位のデイサイト質〜安山岩質の軽石質凝灰岩(凝灰質シルト層を挟む)からなる。下位の凝灰質シルト・砂岩・礫岩互層は平行葉理や斜交葉理が明瞭に発達するが、上位の軽石質凝灰岩は塊状で堆積構造はほとんど見られない。ただしこの凝灰岩層は円磨された軽石礫しか含まない部分と安山岩質礫やシルト礫を交える部分の2層に大別することができる。しかし、両者の境界は不明瞭である.
金沢層は本地域西部では10〜20゜の緩やかな東落ち傾斜を示し、東部では10゜前後の緩やかな西〜南落ちを示すことから、全体として緩やかな向斜構造をもつものと考えられる。しかし、本地域中部にも下位の凝灰質シルト・砂岩・礫岩互層が一部に露出していることから、局所的な背斜構造かドーム構造が存在する可能性がある。
段丘は高位からHT段丘、HU段丘、MV段丘、LT段丘、LU段丘、LV段丘、A段丘が分布する。このうちLU段丘では安山岩質礫からなる円〜亜円礫層と厚さ1m以上の褐色〜黒褐色ローム層が覆っているのが観察できる。
本地域では黒沢川南側の丘陵地基部の地形境界をリニアメントと考えたが、このリニアメント上では断層本体や段丘面の明瞭な変位地形を確認することができなかった。むしろこれよりも西側の黒沢川露頭では金沢層の層理が乱れている部分が認められ、さらにその南側の沢でも金沢層の層理面が高角度を示す部分や小断層が確認されている。いずれも断層本体や破砕帯などは認められないものの、枝別れした断層の一部がこの付近を通っている可能性がある。