2−5−3 横森山測線

横森山測線における反射面層序区分は上位からL段丘堆積物,A−1層,A−2層,B層からなる。L段丘堆積物は明瞭な反射面をもたず,地表のL段丘に対応していることから,段丘礫層と推定される。P波速度推定値は1500m/sec程度である。A−1層は明瞭な互層をなし,CMP番号530以東では斜面にアバットする形となる。最大層厚は160mで,P波速度推定値は1800〜2200m/secである。A−2層も明瞭な互層をなし,層厚は250〜350m,P波速度推定値は1900〜2200m/secである。これらのことからA−1層とA−2層とは傾斜不整合の関係にあると解釈できる。しかし,A−1層とA−2層の傾斜不整合と解釈した部分は反射記録処理によって生じた模様の可能性もある。A−2層の基底面は標高−160から−300mにかけて明瞭な反射面としてあらわれている。最下位のB層は明瞭な反射面がみられず,P波速度推定値は2600〜3200m/secである。A層は大石ほか(1996)の岩崎新田層(鮮新−更新統),B層は同じく本畑層(鮮新統)に相当すると考えられる。

本測線では典型的な東側低下の撓曲構造が認められ,地表付近を含めて標高−400mまでに断層は認められない。撓曲部における各層の最大傾斜は,A−2層で約20°東傾斜,その上位にあるA−1層下部でも約20°,同上部は約10°程度となる。鉛直変位量については,L段丘上部で10〜15m,L段丘堆積物基底で30m程度,A層基底で約150mであり,撓曲変形の累積が確実である。

平成7年度の地形調査では,横森山付近の段丘面前縁(東側)には明瞭な撓曲崖が認められ,段丘面は断層変位を受けていると考えられたが,今年度の反射法探査の結果では断層が認められなかった。本測線は花巻断層帯の南端付近に位置するので,地表付近にまで断層が達していないと考える。