7−1−3 トレンチの解釈

本調査では北湯口トレンチにおける断層のイベント層準の認定及び断層沿いでの変位量を確定するために、トレンチの増掘,犬走りの除去を行った。その結果として、3S面において地表面からトレンチ底まで1面の法面として観察することができた。この法面上で断層を挟んで変位基準となる層準を選び出し、断層沿いでの水平成分の変位量,垂直成分の変位量を法面長から計算して検討を行った。変位基準としたのは上から、@C1層頂面,A底面,BC2層内礫層頂面,C底面,DC層/D層境界,ED層内砂層頂面,F底面,GD層/E層境界,HE層内上部腐植層底面,IE層内下部腐植層頂面,JE層内下部腐植層底面である。これらの点を図7−7に示す。変位量は表7−1に示し、変位量をグラフにして図7−5図7−6に示す。このグラフから読みとれるように、水平変位量はDC層/D層境界から上方が約0.5mとED層内砂層頂面から下方が約1mに区分できる。垂直変位量も同様に約0.2mと約0.4mとに区分される。しかし、BC2層内礫層頂面の変位量の垂直成分が前後に比べて異常に低いため、その理由を調べるために3S法面から2m南側にC層より上の部分のみ掘り込み、4S法面を形成した。その結果BC2層内礫層頂面はCC2層内礫層底面などと同様の変位量を示した(図7−5図7−6表7−1)。3S面での変位量が小さく表れているのは礫層頂面が波打っている堆積構造のためであることが判明した。

これにより、3S法面内に変位量の差が認められ、D層以深は2回の変位を受けていることが確認された。最新イベントはC2層(5,260±70y.B.P.)B層(3,830±130y.B.P.)を変位させ、縄文前期の遺構とA4層(4,350±130y.B.P、3,680±140y.B.P.)に覆われる。1つ前のイベント層準はC層/D層境界である。その年代はD層が渡辺ほか(1993)のV層に対比されることから、V層の14C年代である26,200±400y.B.P.以降で、C層の14C年代7,340±80y.B.P.以前であると考えられる