3−3−3 地形地質の記載

南昌山付近では山地と平野との地形境界は直線的であり、断層の存在を示唆するが、変位地形が不明瞭であり、連続性も悪い。その前面の扇状地の地形面(LT面、LU面など)には比高5m程度の低断層崖が断続的に認められる。個々の低断層崖の形態は明瞭である。鳶ケ平では、Nakata(1976)が19,600y.B.P の 14C年代と鉛直変位量4mを報告している。

上平付近では弧状を呈する3条の断層が並走し、山地の前面に丘陵が連続する。断層は平野側のものほど曲率が大きく、低断層崖の形態が鮮明である。川崎山ではNakata(1976)が25,600y.B.P の14C年代と5mの鉛直変位量を報告している。

葛丸川では、上平断層群は4条の断層に分岐し、最も平野側の断層はLU段丘に鉛直変位量4mの低断層崖が認められる。また、葛丸川右岸ではLU段丘礫層を変位させる断層露頭が確認される(Loc.R277)。渡辺(1996)はその北隣りで同様の断層を観察している。渡辺(1996)によれば、断層はLT段丘礫層を切り、さらにその上の8,200 ±130y.B.Pの腐植層を切っている。一方、山側の断層ではHT、LU段丘に変化が認められない。最も山地側の断層は、更新世前期の志和層を大きく変形させる(Loc.R25) が変位地形は不明瞭である。

松林寺ではLT段丘に幅150〜200mの撓曲を伴う低断層崖が認められる。その鉛直変位量は9〜10mである。松林寺以南、北湯口では平野側の断層は背後にバルジを作り、撓曲を伴う低断層崖が連続する。渡辺ほか(1993,1994) は北湯口でトレンチを掘削し、4,000〜6,000年前に最新イベントがあり、ひとつ前のイベントは6,000〜1万数千年前に発生したと推定した。

山側で平行する断層については、照井ほか(1993)が北湯口教育センター南方において、日詰礫層(高位段丘堆積層)を23.5m変位させる断層路頭を報告している。日詰礫層は前沢火山灰最下部のHn1P(12.29±1.51:FT年代)とその下位のH2P に覆われるとされており、断層活動は少なくとも12万年前以前である。また、この断層のさらに山側には平行する断層があり、志和層を変位させている。

上平断層群は花巻温泉まで明瞭に追跡されるが、台川を越えると不鮮明となる。花巻広域公園付近では山地との地形境界は明瞭でなく、直線性に乏しい山麓線が連なり、段丘面上に低断層崖もない。

鍋倉から湯口にかけてはLU段丘上に鉛直変位量4mの明瞭な低断層崖が認められる。