一般的に,活断層の活動による地震は,千年〜万年単位の間隔で発生する事象であると考えられているが,地震が発生する場所は活断層の直近に限られているわけではない.また,地表に描かれた活断層の線そのものは震源になるわけではなく,地下深いところにある岩盤が震源となることから,大地震のゆれは広い範囲に及ぶ.構造物が大きな被害を受けるかどうかは,地表の活断層の線の直近にあるかということよりも建物が基礎を置く地盤の善し悪しに大きく左右される.したがって,活断層の直近のみに特別な対策を行うのではなく,周辺の地域についても地盤の状況をよく理解し,ゆれの大きさや液状化のしやすさなど,予想される災害特性に応じて建物の耐震化や地盤改良などの対策を行っていくことが重要である.
石川県では,日本海と内陸の活断層近辺で発生が予想される大地震を想定して被害想定を行っている.しかし,地震発生のメカニズムについてはまだ解明されていない点も多い.また,地下浅部で発生するマグニチュード6クラスの内陸性地震では,断層による変形が地表面に現れることが少なく,現在の活断層調査手法では発生状況を把握することは困難である.森本・富樫断層帯の活動性の詳細についてはまだ解明されていない点も残されており,今後さらに情報を蓄積していくことが望ましい.
現在の科学レベルでは,地震の完全な予知は困難である.地震災害から身を守るには,日頃から地震や津波,活断層に関する情報に注意し,これらについて正しい知識を身につけておく必要がある.また,防災意識を高揚し,防災行動力を強化することによって,災害時の自発的対応力を高めることができる.
地震はいつ起きるかわかりません.「いつ地震が起きても大丈夫」という心の備えが,地震災害を軽減するためには最も重要である.