富樫断層 − 金沢市窪付近から鶴来町日御子付近まで
平成8年度〜平成10年度調査の結果,「新編日本の活断層」で活断層の存在が指摘されていた森本丘陵〜富樫山地と平野との境界付近に,森本断層沿いでは完新世以降の地層を切る断層が確認された.また,富樫断層沿いでは約3万年前以降の地形面を構成する地層の変位が確認された.平9年度までの調査では山地が上昇する傾向と調和的な断層が確認されなかったが,平成10年度の調査では山地側が上昇する累積変位を伴う逆断層が確認された.これは森本断層の主断層を構成するものと考えられる.したがって森本・富樫断層帯は,第四紀(過去約200万年間),第四紀後半(過去数10万年間)あるいは第四紀後期(過去10数万年間)など,各機関で活断層を認定するための目安となる期間のいずれをとってもその期間内に活動したことが明らかな活断層であることがわかった.
したがって地形・地質調査の結果から確認された,第四紀後期の新しい地形面が森本丘陵および富樫山地に分布する中期更新世の地層の変形に調和するように変位している範囲には,今回確認されたものと同様な活断層が分布しているものと考えられる.なお森本断層と富樫断層の間には野町撓曲と呼ばれる低崖ないし急傾斜帯が認められるが,これは地形的特徴から断層活動による変位地形である可能性が高いと考えられる.
なお,富樫断層の南西方,辰口丘陵に認められるリニアメントと森本・富樫断層帯との関係について,今回は詳細な検討には及ばなかった.詳細な調査は今後の課題として残すものとする.