(3)断層
今回の地表踏査では,地層の境界を形成する断層は見出されなかったが,1ヶ所で流紋岩質凝灰岩の露頭中に破砕帯が発見された(図3−7−7).断層露頭は調査地域南部の切土地に露出しており,走向はほぼN−Sで西傾斜84°を示す.破砕帯は見かけの幅5m程度であるが,両側は同質の医王山累層の凝灰岩からなることから,変位量は不明である.破砕帯は珪化が進んでおり,走向に沿ってバンド状に黒色岩が形成されている.この黒色岩を採取し,薄片を作成して検鏡したところ,一つは珪化木,もう一つは黒色泥岩であることが判明し,いずれも著しい変形構造を示すことが明らかになった(図3−7−8).珪化木は年輪が大きく屈曲し,黒色泥岩は褶曲構造を示すことから,断層運動のために加えられた圧縮力の影響を受けている可能性が高い.断層の走向は丘陵と平野が接する地形境界と調和的であり,富樫断層の本体を示す可能性もあるが,新しい堆積物を切っている状況は確認できず,破砕帯の珪化が進んでいることから,活動年代は古いと推定される.それ以上の詳細については,今回の調査では明らかにできなかった.
図3−7−7 断層露頭写真・スケッチ
図3−7−8 破砕帯に挟在されている珪化木および黒色泥岩の顕微鏡写真