北部では,丘陵末端付近に傾斜を持った砂礫層や無層理の砂層が分布している.これらは,それぞれ,北側から連続する卯辰山層,大桑層に相当するものと考えられる.曽谷大谷川の右岸に沿っては,凝灰岩の露頭に混じって砂岩および泥岩の互層が露出しているが,これらも大桑層の一部に相当する.調査範囲の北東端では,無層理砂層中に円礫層が狭在しており,大桑層の最下部にあたるものと推定される露頭がみられた.
曽谷大谷川の渓床部では,ゴルフ練習場付近で粗粒玄武岩からなる固い溶岩の露頭が見られる.これは,七曲凝灰岩層最上部の玄武岩質溶岩であろう.このことから,溶岩の上位(下流側)に位置し,大桑層より下位の層は下荒屋凝灰岩層,溶岩流より下位(上流側)の層は七曲凝灰岩層であると考えられる.
中部から南部にかけては凝灰岩層が広く分布しており,丘陵の末端付近まで連続的に露出している.この凝灰岩層は,淡緑灰色を示す露頭もあり,医王山累層に相当すると考えられる.医王山累層の凝灰岩層が分布する地域では,緩傾斜地縁辺部に位置する露頭の一部で無層理の極細粒砂層が凝灰岩層を不整合に覆っている様子が観察できる.砂層は粗粒砂や小礫,シルト層をパッチ状に狭在していることから,大桑層や砂子坂互層に見られる砂層の特徴とはやや異なる.平坦な地形面周辺のみに見られることや,層厚が薄いことから,大桑層あるいは砂子坂互層の砂層が局所的に残されているか,2次的な堆積物であると考えられる.また,緩斜面となっているような地域では,多くの露頭で凝灰岩や砂層の上位を円礫層が薄く覆っていることが観察される.緩斜面上には円礫の転石が数多く認められることから,緩斜面は段丘面を,円礫層は段丘礫層を示している可能性が高い.
丘陵地より西側に広がる平野は,手取川が形成した広大な手取扇状地礫層と,丘陵地から流れ出る小河川によって形成された小規模な扇状地礫層からなり,既存資料からは砂礫層が厚く分布しているものと推定される.
図3−7−5 踏査ルート図
図3−7−6−1 露頭写真・スケッチ
図3−7−6−2 露頭写真・スケッチ
図3−7−6−3 露頭写真・スケッチ