(1)掘削経緯

トレンチはバックホーを用いて掘削を行い,丘陵側から順次掘削していった.掘削当初はやや傾斜した段丘礫層とシルト層の互層が現れたが,地形境界付近を境にほぼ水平な砂層ないしシルト層の互層となり,沖積層に移行したことが確認された.地形境界付近よりやや平野側の地下1m付近からは地下水の湧出がみられ,一部壁面が崩壊したものの,時間とともに安定化した.その後沖積層を掘り下げ,段丘礫層と沖積層の層位関係や沖積層基底面を確認する作業を行ったが,平野側に向かって沖積層基底面が徐々に深くなり,バックホーでの掘削が困難になったため,地形境界から10m程度平野側まで掘削した地点で掘削を終了した.掘削終了後,沖積層中からは湧水がみられ,時間の経過とともに砂層が流失して壁面の一部が崩壊したが,観察は終了していたためそのままシートをかけて保護した.また,段丘礫層は平野側に向かってやや傾斜した流れ盤構造となっており,掘削当初から地すべり的な崩壊が懸念されていた.簡易地すべり監視装置を設置して観測を行った結果,掘削後10日目にトレンチ上部にわずかに亀裂が認められ,監視装置も亀裂の拡大傾向を示したため,トレンチの一般公開予定を待たずに埋め戻しを行った.