また,発見された断層中には,トレンチ底まで連続的に有機質のシルトや木片が多量に狭在されていたが,年代測定の結果50,000年以上前の木片が含まれていることが明らかになったことから,この層は下位の層から引きずり上げられてきたものであると考えられる.
上盤側の地層の一部は,下盤側の地層中に擬礫状に点在している.また,断層面付近では,上盤側の地層が折れ曲がるようにして取り込まれている.これらの観察結果は,断層変位による地盤の上昇,崩壊を意味しているものと考えられる.この層を挟む上下の層の14C年代は6,430±60および6,140±40であることから,断層変位がこの期間内に生じた可能性が高い.
また,断層は,6,050±40Y.B.P.の木片を含む砂層に不整合に覆われていることから,それ以後に活動を行っている可能性は小さいが,木片は2次堆積である可能性も否定しきれないことから,このトレンチでの最終活動時期は確定できない.