森本・富樫断層帯の活動状況を把握する上で,主断層の確認と最新の活動年代,長さを正確に把握することは重要である.そのためには,梅田地区より北方の地区で,主断層の活動状況を把握するための詳細な調査が必要である.
平成8年度に行った地形判読調査の結果によると,津幡町の中心市街地から金沢市森本地区にかけての地域では,丘陵地・平野の地形境界より数百m平野側の緩斜面上に,断続的に直線的な急傾斜帯が存在している.調査当時はこの地形が断層変位地形を示すものか,浸食地形を示すものか,はっきりとした結論は出せなかったが,梅田地区で行った詳細調査の結果では,主断層は地形境界よりかなり平野側に出た位置に伏在していることが推定されたことから,急傾斜帯が断層変位地形を示している可能性が高いと考えられるようになってきた.また,平成10年9月に国土地理院が発行した「都市圏活断層図 金沢図幅(縮尺1/25,000)」においては,平成8年度調査による急傾斜帯を断層の変位による低崖ないし撓曲崖とみなしている.
これらのことから,急傾斜帯を詳細に調査することにより,主断層の活動状況が把握できる可能性があると考えられる.急傾斜帯の多くは宅地化や圃場整備等により不明瞭になったり失われたりしているが,津幡町太田から金沢市二日市町にかけての地区では現在でも断続的に観察できる.よって,これらの地区で詳細な調査を実施することが適当と考えられる.