3−4−4 簡易貫入試験の結果

テストピットの結果,PT−2〜6の区間では地表付近の地層がほぼ水平に近い構造を示すが,PT−1〜2にかけての区間では地層のつながりが不明瞭であり,最近の地層が変形して崖を形成していた可能性があるのはこの区間に限られることが明らかになった.このことから,PT−1〜2周辺の地質状況をさらに詳細に検討するため,簡易貫入試験を実施することとした.試験位置は,PT−1よりやや県道寄りからPT−3までの区間で,ST−0〜7の計8本実施した(図3−4−5).

簡易貫入試験は,直径25mmの貫入棒を垂直に地面に立て,5kgの重錘を50cmの高さから自由落下させて貫入棒を地中に貫入させるもので,10cm貫入させるのに要する打撃回数をNdで示す.標準貫入試験で得られるN値とは相関があるとされており,調査地区のように砂質土が分布すると推定される場合,N=1.1+0.3Ndという換算式を用いて,Nd=10,20,30,40,50の時,N値はそれぞれN=4,7,10,13,16程度と見積もることができる.

各地点では,貫入途中でNd値が若干下がる部分がいくつか認められ,層相の変化を推定できるデータが得られた.また,下位に向かってしだいにNd値が高くなっていく傾向が認められ,2.3m〜3.6m程度の深度でNd値が50を越えたため,その深度で試験を終了した.こうして得られた8地点のNd値を並べて推定地質断面図を作成した(図3−4−6).

試験の結果,ST−4〜7の区間では地表面から3m程度の範囲に大きな構造の変化は認められず,ほぼ水平ないし丘陵側に向かってごくわずかに傾いている地層が連続しているものと推定された.一方,テストピットPT−1付近から県道側で行ったST−0〜4の区間では,地表より1.4m程度以深の地層が平野側に向かってやや傾いているように見えることが明らかになった.確認された範囲では,ST−4地点で深さ1.4m付近にある地層が,ST−0では2.0m程度まで深くなっており,平野側に向かう9.5mの区間で60cm程度の比高で傾斜していると推定される.しかし,それより下位の層でも20cm程度の落差しか認められないところもあり,地層の傾斜は系統だっているとは言えない.

図3−4−5 利屋地区簡易貫入試験結果による推定地質断面図