3−4−3 テストピットの結果

テストピットは米軍写真の写真判読で認められた急傾斜帯を横断するような位置に配置し,県道より南東に向かって約50mの区間で等間隔にPT−1〜6の6箇所を掘削した.作業当初は2m程度の深さまで掘削する予定であったが,湧出地下水の量が予測よりも多く,また,地下水位が浅かったことから,壁面の崩壊が著しく,最終的には1m程度の掘削深で掘り止めることとした.詳細な観察の結果を図3−4−3−1図3−4−3−6に,推定地質断面図を図3−4−4に示す.

図3−4−3−1 利屋地区テストピット観察結果(T−1)

図3−4−3−2 利屋地区テストピット観察結果(T−2)

図3−4−3−3 利屋地区テストピット観察結果(T−3)

図3−4−3−4 利屋地区テストピット観察結果(T−4)

図3−4−3−5 利屋地区テストピット観察結果(T−5)

図3−4−3−6 利屋地区テストピット観察結果(T−6)

図3−4−4 利屋地区推定地質断面図

PT−1では,標高1.50m程度のところに腐植土層がみられ,それより下位の中砂層から9世紀後半(平安時代中期)の土器片が複数見出された.有機質シルト層や中砂層は乱された痕跡がなく,自然に形成されたものと考えられることから,PT−1では少なくとも9世紀後半以降の地層が確認されたいえる.

PT−2〜6では,いずれのテストピットも耕土の下位は砂質シルトもしくは中砂からなり,パッチ状の薄いシルト層や軽石を含む砂層を狭在している.これらの層を指標として地層のつながりを検討すると,PT−2〜6の区間では,地層は地形面に沿うようにやや平野側に傾斜している傾向がみられるものの,ほぼ連続的に対比可能で,大きな落差は認められなかった.また,T−3の標高1.9mの位置で採取した半月状の材の14C年代測定の結果では,30±80Y.B.P.という値が得られた(表3−4−2).

表3−4−2 利屋地区の14C年代測定結果

サンプルとして用いた材は,採取時の状況から農作業で用いられていた木杭の一部である可能性が考えられていたが,得られた年代値はそれを裏付ける結果となった.なお,このサンプルのほかにも少量の年代測定サンプルが得られたが,いずれも測定の前処理段階で溶融してしまい,年代測定は実施できなかった.

これらの結果,PT−1とPT−2の間では対比可能な地層が見出せず,テストピットでは地層の連続性は確認できなかった.

これらの観察結果を総合すると,米軍写真の写真判読により見出された段差地形は,PT−1〜2の間の地層の不連続部分に形成されていた可能性があると考えられる.また,その他の区間では地表付近の地層が連続的にほぼ水平に堆積していることから,最近の断層活動で変形を受けているとは考えにくい.