利屋地区では,断層変位地形を考えられる低崖について詳細調査を実施したが,テストピットおよび簡易貫入試験の結果,新しい時代の地層に変位は推定されなかった.
梅田地区では,発掘調査で見出された丘陵側隆起の撓曲崖状地形について詳細調査を実施した.トレンチ調査の結果,丘陵側隆起の逆断層が見出され,この断層が少なくとも34,550年前の地層を切っていることが明らかになった.このことから,森本断層は活断層であることが確実になった.また,このトレンチでは複数の断層が見出されたことから,主断層の一部を見出した可能性が高い.平成8年度のトレンチ調査の結果とあわせて,梅田地区では主断層とそれに伴う副次的な断層が見出されたことになる.
四十万地区では,トレンチ調査によって地すべり性の正断層群が見出された.また,周辺のボーリング調査結果とあわせると,トレンチ底に現れた約3万年前の地層が,トレンチから丘陵側75mの区間で8m程度平野側に傾いていることが明らかになった.
坂尻地区では,トレンチ調査により手取扇状地礫層が4.5m以上上昇していることが推定された.
これらの結果から,最近3万年程度の期間における富樫断層の平均変位速度は,0.23〜0.27m/1000年ないしそれ以上と見積もれる.