阪神・淡路大震災を契機に,直下型地震の震源となりうる活断層の活動性の詳細な検討が必要とされるようになってきた.本調査は,石川県の県都である金沢市付近に分布する森本・富樫断層帯について,その活動履歴を明らかにし,長期的な地震発生の可能性についての評価を行い,地震防災対策上の基礎資料を得ることを目的とする.
平成8年度の調査では,金沢市梅田地内で行ったトレンチ調査により約2000年前に活動したと推定される断層露頭が確認された.しかし,この断層は平野側隆起の副次的な断層であり,周辺に主断層が伏在しているものと推定されたことから,さらなる調査が必要となった.また,平成8年度の調査では,断層の延長に関する情報や1799年金沢地震との関係が明らかにされなかったことから,これらについても解明していく必要があった.
平成9年度の調査では,金沢市小坂地区で行ったトレンチ調査により約3,000年前に堆積した砂層を起源とする液状化の痕跡が確認された.この液状化による砂脈は奈良・平安時代の土器片を含む地層直下の層まで到達していた.また,金沢市四十万地区で行ったトレンチ調査の結果,約30,000年前〜9,000年前の期間に堆積した地層が大きく変形していることが確認された.しかし,いずれのトレンチにおいても断層本体の確認はできず,活動履歴等の詳細を検討する資料は得られなかった.
2ヶ年にわたる調査で残された課題を解決するために,平成10年度調査においても森本・富樫断層帯にかかる複数の地点で詳細な調査を行うこととした.具体的な調査地点は,金沢市利屋地区,梅田地区,四十万地区,坂尻地区の4地区である.これらの地区で地表地質踏査,ボーリング調査,テストピット,トレンチ調査等を行い,本報告書に示す成果を得ることができた.
なお,本調査は,石川県森本断層調査委員会の指導・助言を受けながら実施した.ここに感謝の意を表する.
平成11年3月
石川県 環境安全部
消防防災課 震災対策室