(5)断層

今回の地表踏査では、地層の境界を形成する、あるいは破砕幅が数十mを越えるような大規模な断層破砕帯は確認されなかったが、七瀬川沿いの林道や四十万八幡神社から東へのびる谷の露頭では、見かけの変位が数p〜数m、破砕幅数cm以下の小規模な断層が確認された。しかし、高位砂礫層以降に堆積した比較的新しい地層を切る断層は認められなかった。

以下、各地質ごとに記述する。

@七曲層の断層

本層中の断層は、踏査地域北部東方に見られる。断層の走向・傾斜はN20°E,18°Eで、東側隆起の逆断層である(図3−4−5−3の12)。累積性は確認できないことから一度の活動で形成されたものと考えられ、垂直変位量は1.7mである。

A卯辰山層の断層

本層中の断層は、四十万八幡から東へ延びる谷に見られる。

この露頭では卯辰山層はほぼ直立している。卯辰山層中の層厚20〜30cmのシルト層のみが切られている断層で、断層自体も傾斜している(図3−4−5−2の8)。この断層面の走向・傾斜はN70°E,45°Eの平野側が隆起する逆断層で、変位量は約5cmである。断層の変位は堆積物のすべてにおよんでいるわけではなく、連続していない。断層が卯辰山層堆積当時に活動した可能性もあるが、決定的な情報は確認できなかった。

地質踏査(精査)の範囲では最近の活動を示す断層露頭は確認できず、他の地域でも高位砂礫層以降に形成された新しい地層を切る断層は確認できなかった。