調査地域の沖積層の堆積環境を推定する目的で、珪藻分析を行った。
(2)珪藻分析の結果
表2−7−3−2、図2−7−3−3−1、図2−7−3−3−2に珪藻分析に用いた試料の採取位置を、表2−7−3−3析結果を、図2−7−3−4に珪藻化石の例を示す。
表2−7−3−2 試料採取位置
図2−7−3−3−1 試料採取位置図(E面)
図2−7−3−3−2 試料採取位置図(W面)
表2−7−3−3 珪藻分析結果
図2−7−3−3−4 珪藻化石の例
図2−7−3−3−2 試料採取位置図(W面)
表2−7−3−3 珪藻分析結果
図2−7−3−4 珪藻化石の例
分析結果によれば、5試料のうちD−1では全く珪藻化石を産出せず、D−16,D−20は属・種不明の珪藻殻の破片が存在するのみであった。このため、これらについては古環境を推定できない。
D−3とD−13から産出した珪藻種と個体数は表2−7−3−3の通りであり、次の事項が推定される。
@D−3
38種の珪藻化石が産出し、このうち淡水性種が全体の82%を占め、海水性5.4%,汽水性5.0%,汽水〜淡水性7.9%が随伴する。際だった優占種がなく、生息環境の異なる種群や、塩水濃度に対する適応を異にする種群が混じることから、異地性混合群集からなるといえる。湖沼浮遊性種群・好止性種群の全体に占める割合が多いことから、河川河口上流部の塩水の流れ込みのある沼沢地的環境で形成された地層であると推定される。
AD−13
産出化石殻数が少ないため、古環境の推定は困難であるが、D−3と同種のものが産出する。
(3)古環境の推定
既往の文献等によれば、約6,000年前は最大海面上昇期であり、標高5m前後まで海進があったとみられている。今回のトレンチによって現れた卯辰山層上面のレベルは、断層の上盤側(国道側)が標高4.0m,下盤側が標高3.0m付近であり、レベル的には海進時の海成堆積物が分布するはずであるが、トレンチ壁面には約5,000年前より古い沖積層は存在していない。これは、当時この地点が少なくとも数m高位にあり、その後侵食(削剥)されたか、地殻変動(断層活動)によって全体的にレベルが低下したかのどちらかを示している可能性がある。
約5,000年前以降は河口に比較的近い河川下流部に位置する、湿原状で、しばしば砂質土の流入を生ずる環境にあったことが推定される。
その後は植物の生育の少ない氾濫原となり、弥生時代中〜後期以降は古代人の生活の場となって今日に至っていると考えられる。