(4)調査仕様

(1)掘削経緯

@掘削範囲の設定

簡易測量により掘削範囲を設定し、木枕で標示するとともに安全施設を設置した。

A掘 削

遺跡発掘残土を移動後、仕上がり壁面の形状を念頭において、0.4‰バックホーを使用して掘削した。壁面の掘削は最初に壁面勾配を決め、それに沿うように慎重に施工した。

B壁面の整形

バックホーによる概略掘削が完了すると、作業によりトレンチ壁面を平滑に整形し、仕上げ面とした。

Cグリットの設定

仕上げ壁面に対して観察及びスケッチ用の1mメッシュのグリッドを設置した。グリッドの設定は、トレンチ周辺に水平に横板を付けた棚を作って起点側壁面から距離1m毎の表示を行い、これを基準として壁面の水平・垂直方向に水糸を張って1m×1mのグリッドを作成した。

D測量

トレンチと周辺部に平板測量と水準測量を行い、トレンチの位置・形状を図化した(付図9)。

E壁面の観察・スケッチ

 トレンチ壁面の観察とスケッチを縮尺1/20精度で詳細に実施し、同縮尺のスケッチ図と解釈図を作成した。

F埋め戻し

 0.4‰バックホーにより十分締めながら埋め戻しを行い、トレンチ掘削前の状況に復旧した。

(2)掘削規模

T−2トレンチは壁面状況を見ながら4段階にわたって掘削を行った。なお、トレンチと遺構の関係を図2−7−3−1に示す。また、トレンチの全景を写真2−7−3−1に示す。

@第1段階

沖積層内の掘削で、遺跡発掘調査から弥生時代後期後半および古墳時代とされている遺構(水路)と、それより古い時代の地層が認められた(写真2−7−3−2写真2−7−3−4)。

弥生時代後期前半とされる層以下の地層は、平野側を上位とする撓曲状の構造を示しており、深部の断層活動に伴って変位を受けている可能性が高いと判断された。ただし、これらの構造については堆積構造や断層活動以外の原因による堆積後の変形(例えば圧密やロードキャスト)とする考えも完全には否定できないことから、さらに深部まで掘削を行って確認することとした。

A第2段階

トレンチ底部をさらに掘削したところ、撓曲構造が顕著になり、平野側を上盤とする逆断層が現れた。断層面は沖積層基盤の卯辰山層の走向・傾斜と同じような傾向を示した。

B第3段階

第2段階では上盤側の沖積層基底が現れたが、下盤側の沖積層基底を確認して変位量を明らかにするため、さらに掘削を行った。その結果、深さ5.5m付近で下盤側の卯辰山層に到達し、この段層による垂直変位量は0.9〜1.0mであることが確認された(写真2−7−3−5写真2−7−3−8)。

図2−7−3−1 T−2トレンチと遺構の分布(石川県埋蔵文化財保存協会資料に加筆)

写真2−7−3−1 T−2トレンチ全景

写真2−7−3−2 

写真2−7−3−3 

写真2−7−3−4 

写真2−7−3−5

写真2−7−3−6

写真2−7−3−7

写真2−7−3−8

C第4段階

第1〜3段階の掘削によって、垂直変位量が0.9〜1.0mで平野側隆起の逆断層の存在が明らかになり、それに起因する沖積層の撓曲構造も確認されたが、水平方向の変位については不明であったため、W面に対して直行方向に断層面を含む切り込みを掘削した(図2−7−3−2)。その結果、変位は連続的に観察されたものの、水平変位を示す明瞭な構造は見られず、大きな水平変位は伴っていないものと確認された。写真2−7−4写真2−7−5(写真U−7−3−9〜12)。

それぞれの段階での掘削規模は以下の通りである。

第1段階:長さ10m×幅5m×深さ3m

第2段階:長さ12m×幅7m×深さ5m(上盤側基盤の確認)

第3段階:長さ15m×幅7.5m×深さ6m(下盤側基盤の確認)

第4段階:長さ15m×幅9m×深さ6m(水平方向の変位の確認)

図2−7−3−2 水平変位の確認位置(写真は左のスケッチ図に対応)

写真2−7−5

(写真U−7−3−9、写真U−7−3−10、写真U−7−3−11、写真U−7−3−12)