トレンチの壁面スケッチ(W面)を図2−7−2−4に示す。
調査当初の掘削では、遺跡面付近から縞状の構造を持つ砂層が出現し、同深度の広い面積にわたり分布するように見受けられた。発掘担当者の話では、発掘調査後に堆積したものである可能性があるとのことであった。この砂層はほぼ水平に近い砂層で、堆積構造が確認された。また、下位の粘土層を切る構造は認められなかった。このことから、液状化による砂層ではないと判断された。
その後トレンチを拡大することにより、発掘調査によって「液状化痕跡」とされている幅10cm程度の蛇行する亀裂を発見した。この亀裂を横断するように30cm程度掘削して断面を観察したところ、亀裂より下位の地層中には明瞭な砂脈等は認められなかった。
このことから、T−1トレンチ内に見られる遺構が噴砂によって切られているという証拠は乏しく、遺跡発掘調査における「液状化痕跡」の認定は誤りである可能性が強いと考えられる。
(2)T−1’トレンチ
掘削当初の壁面に砂脈らしき砂層が確認されたことから、壁面の裏側を掘削し、砂脈の連続性を観察した。
掘削当初の壁面には砂層の一部が下位のシルト層に垂れ下がっているように見えていた(図2−7−2−5)。少し削り込んだ壁面では、砂層が周辺のシルト層とは明瞭に境され、下方に連続しているように見受けられた(図2−7−2−6)。しかし、さらに10cm程度壁面を削り込んだ結果、明瞭な砂層はなくなり、砂の塊がシルト層の中にパッチ状に入るのみとなった(図2−7−2−7)。50cm程度の間を開けて掘削した裏側の壁面では、砂混じりシルト〜砂層が1.5m程度の厚さで確認され、砂脈等はどの壁面にも現れなかった。
これらのことから、T−1’トレンチにおいても液状化痕跡と認定される痕跡は見出されず、液状化が発生したという確証は得られなかった。
図2−7−2−4 T−1トレンチW面スケッチ図
T−1’トレンチの壁面@
T−1’トレンチの壁面A
T−1’トレンチの壁面B