弾性波探査は、地表あるいは地表付近で振動(弾性波)を人工的に発生させ、その地下からの応答(地震記録)を測定し、地下構造を推定する手法である。人工的に発振された弾性波は,地下の弾性的性質の異なる境界面(地層境界など)に達すると、その振動エネルギーの大半は屈折波として下位の地層へ進行するが、一部は上方へ反射して地表に返ってくる。この反射してきた波を地表に配列展開した受振器によってとらえ、弾性波の到達時間や振動エネルギーの減衰の状況などから地下構造を推定する。このうち地表の受振器に初めて到達する弾性波を用いて解析するものは屈折法弾性波探査と呼ばれ、反射してきた波を利用する方法が反射法弾性波探査である。
(2)測定方法
@測量
測線設定のため、受振点・発振点の水準測量及びトラバース測量を実施した。なお水準測量の標高基準としては、測線と交わる国道159号線の図根点(標高7.1m)を使用している。
Aテスト
本測定に先立って垂直重合数のテストを実施した。受振点間隔は本測定と同じとした。
垂直重合数を5、10、20回について検討した。5回と10回との比較では明らかに10回の方が記録は良好である。10回と20回とでは大きな差は認められない。このことから本測定では原則として20回の垂直重合とし、記録が良い場合は10回程度でも良いこととした。
B測定
テストの結果に基づき、表2−5−2−1に示す仕様で測定を実施した。
表2−5−2−1 探査仕様一覧
一般的な反射法探査の概念図を図2−5−2−3に示す。
図2−5−2−3 反射法弾性波探査の概念図
測定手順は以下のとおりである。
a.受振点の設置
あらかじめ受振器を各測点毎に設置し、本線ケーブル(CDPケーブル)に接続する。
b.測定
図2−5−2−4に示すように、受振器展開範囲のほぼ中央付近で発震する方法をスプリット展開と呼ぶ。×印点において発振する場合、各受振点で受けた信号は CDPケーブルにより観測車内の探鉱機へ送られる。 探鉱機では各測点毎に所定の垂直重合を行った後、モニターで記録をチェックし、記録がよければ探鉱機内のハードディスクに書き込む。
その測点での測定が終了すると振源は次の点に移動して同様の発振を行う。30点の測定が終了した時点で、受振点範囲は30点分前方に移動させて同様の測定を行う。以下この測定作業を繰り返す。このような測定方法は共通反射点水平重合法と呼ばれる。なお、作業状況を巻末資料6に付した。
図2−5−2−4 スプリット展開概念図
c.ショット記録
100m毎のショット記録を、図2−5−2−5、図2−5−2−6に示す。
図2−5−2−5:オリジナルのショット記録にAGC(100msec)を施したものである。
図2−5−2−6:図1−3−3の重合直前の記録で、風化層補正、残差静補正、デコンボリューション(Spiking Deconvolution)及びAGCが施されている。
(3)データ取得結果
全般に、オリジナルのショット記録(図2−5−2−5)は低周波のノイズが卓越し、特に測線中央付近(起点より100m〜200m付近)で顕著である。この付近のデータは、それ以外の区間と比較して屈折波の到達が遅いことが読みとれる。一方、起点より水平距離200m付近から終点側では記録の質がよい。具体的には、ノイズが少なく(初動以前に振幅の大きな波は認められない)、高周波のデータが得られた。また、重合直前の記録(図2−5−2−6)では初動付近の記録が改善され、断片的ながら反射波が認められるようになった。
(4)測定機器
測定機器は、表2−5−2−2に示すとおりである。
表2−5−2−2 使用機器一覧表
(5)測定数量
極浅層反射法弾性波探査(梅田地区)で探査を行った数量は以下の通りである。
測線長 :420m(0〜418m)
受振点数:197点(0〜418m,ただし114〜122m(5点)はJRのため、146〜156(6点)は国道159号線のため、292,294(2点)は水路の橋の上のため欠測)
発振点数:202点(0〜420m,ただし114〜122m(5点)はJRのため、150,152(2点)は国道159号線のため、292,294(2点)は水路の橋の上のため欠測)
図2−5−2−5 ショット記録(ACG:100msec)
図2−5−2−6 ショット記録(風化層補正、残差静補正、デコン、ACG:100msec)