森本断層・富樫断層の調査地域について、実体視用航空写真による地形判読を実施した。航空写真の縮尺は1/10,000を基本とし、地形面の分類、断層変位地形などの抽出に努めた。地形区分の凡例を表1−2−3−1に示す。この結果を総合して、縮尺1/10,000の地形分類図を作成した(付図3−1、付図3−2、付図3−3)。
表1−2−3−1 地形分類図凡例
(2)判読結果
@地形面の区分
調査地域の地形は、大きく分けて東側の山地と西側の平野に大別される。
東側の山地は、比較的なだらかな起伏を示す丘陵性の山地で、所々に地すべり地や崩壊跡地、崖錐、沖積錐等が分布している。地すべり地は森下川より北側に見られ、地層の流れ盤方向にあたる西向き斜面に多い。崖錐は山地と平野の境になる山麓線に沿うように形成されている。
山地の前縁部および中腹には段丘が形成されており、比高や開析度に応じて高位・中位・低位段丘に区分した。高位段丘は野田山を中心に形成され、野田山から南部の山地に点在している。なお、ここでは便宜上山頂緩斜面も高位段丘面として区分した。中位段丘は金沢市小立野や鶴来町八幡町付近に発達しており、山地の中腹部にも点在している。鶴来町八幡町付近の中位段丘面には扇状地が発達しているが、これらも開析されて段丘化している。低位段丘は金沢市街地付近に広がっており、その他の河川沿いにも小規模に発達している。金沢市寺町を中心に広がる低位段丘は西側に向かって緩く傾斜していることから、大規模な開析扇状地であると考えられる。
平野部では古くから圃場整備事業が行われており、微少な地形はかなり失われていると考えられることから、1952年撮影の米軍写真を中心に判読作業を行った。調査地域西側に広がる平野のうち、津幡町加賀爪から金沢市東山および金沢市窪から鶴来町月橋町までの間の山麓部には、傾斜の緩い小規模な扇状地が連続的に形成されている。犀川や浅野川等の大きな河川に沿う地域には谷底平野が形成されているが、下流部は傾斜の非常に緩い氾濫平野となっており、一部では自然堤防が発達している。金腐川流域に限っては扇状地・自然堤防の発達は悪い。金沢市四十万より南部の平野は手取川によって形成された手取扇状地の一部となっており、調査地域付近では北側に向かって緩く傾斜した地形面を形成している。
A活断層の存在を示す可能性のある地形面の記載
1952年(米軍写真)および1992年撮影の航空写真を用いて、断層変位地形である可能性のある地形の抽出を行った。
金沢市東山付近から津幡町浅田にかけての山麓線は北東−南西方向に直線状になっており、金沢市吉原町から金沢市森本町にかけての丘陵部には明瞭なリニアメントが確認された。金沢市の市街地付近では浅野川・犀川の流下方向と直交する方向に低崖ないし周辺と比較して傾斜が急になる地域が帯状に直線的に連続していることが確認された。これについては「3)簡易地形測量調査」の項で詳細に述べる。
津幡町から金沢市森本付近までの山地には、北西向きの斜面に地すべりが多く形成されている。これは地層の傾斜方向と調和的であり、層すべり的な地すべりが発生しているものと考えられる。これらの地すべりなどから供給される土砂により、山麓部には連続的に緩傾斜の扇状地が形成されている。米軍写真を判読した結果、この扇状地上に、山麓線とほぼ平行するような方向に扇状地等の傾斜が急になる地域が、幅数十m・長さ数百m程度の単位で断続的に分布していることが明らかになった。この直線状の急傾斜地は、津幡町加賀爪および南中条から太田、鶴来町坂尻町および小柳町付近で比較的明瞭であったが、圃場整備等の人工改変により現在は不明瞭になっている。