7−1−1 地質観察による記録

藤田・前田(1984)によれば,須磨断層は,「西須磨において花崗岩が約70°の傾斜で大阪層群に衝上している」ことが記載されている。岡田・東郷編(2000)によれば,この露頭位置は,一ノ谷第1トレンチ地点の近傍であることが示されている。第1トレンチにおいて,ほぼ同様の断層形態が確認されたことは4章に記したとおりである。藤田・前田(1984)は,北側の花崗岩と接する花崗岩質砂礫層を大阪層群上部亜層群としているが,本調査においては,この砂礫層に関する年代情報を得ることはできなかった。

また,本調査で実施したボーリング調査【IT−3地点】の深度5.6 mで,上位の破砕質花崗岩と下位の花崗岩質砂礫が断層で接するコアが採取された。その断層面は約50°Nの傾斜を有することが確認され,第1トレンチに見られた断層面と同じように,腐植質粘土が断層粘土として断層破砕帯中に挟まれていることが観察される。これらの事実により,IT−3地点においても,第1トレンチと同様の地質状況で須磨断層が連続していると推定される。

さらに,本ボーリング調査【IT−6地点】においては,深度37.6〜57.0 mにも花崗岩の分布することが確認されたので,須磨断層は,少なくとも2本以上の断層によって構成されていることが明らかとなった。ただし,断層面をボーリングコアにおいて確認することはできなかった。また,深度37.6〜57.0 mに見られた花崗岩の上位には,大阪層群と推定される腐植質粘土や青灰色のシルト質細粒堆積物が分布しており,これらの試料を用いて花粉分析などを実施した。その結果,これらは中期更新世以降の堆積層であることがわかった。これは,藤田・前田(1984)が花崗岩と接する堆積層を大阪層群上部亜層群としていることと矛盾しない結果となっている。