(2)第2トレンチでの須磨断層

第2トレンチ地点は,先に示した第1トレンチと同様に,谷の両壁を構成する地質種類が異なる。北側には花崗岩,南側には花崗岩質砂礫層がそれぞれ露出することが露頭で確認されている。しかし,本トレンチ地点では谷底堆積物が予想以上に厚く堆積していたため,その地質境界断層を確認することはできなかった。トレンチ底の南北両端で実施した小口径(Φ30mm)の簡易ボーリングでは,北端には花崗岩が,南端には花崗岩質砂礫層が確認されたので,地質境界断層が本トレンチ底の直下を通過することは確実と考えられる。しかし,本トレンチ法面の観察結果より,谷底堆積物には断層による変形は認められていない。したがって,トレンチ地点に潜在すると想定している断層は,谷底堆積物が形成されて以降,活動していないと推定される。

谷底堆積物の形成年代を求めるため,腐植質堆積物を用いて放射性炭素年代を測定した。測定結果を堆積物ごとに示すと表4−8のようである。この表に示されるように,第V層〜第X層においては,各層で比較的バラツキの少ない測定値が得られている。1σ値をもとに,色別して明示しているように,各層の形成年代は上位より,第X層がCal AD 1280〜1450,第W層がCal AD 790〜1040,第V層がCal AD 130〜310と推定される。しかし,トレンチ法面下部の第T層と第U層より得られた年代測定結果は,第V層より上位の堆積物の測定値と整合していないことより,その測定値の信頼性は乏しいと考えられる。

なお,表4−8に示したIT2−C10試料は,肉眼観察では層区分が明確でなく,第X層に属する可能性もある。

以上より,第2トレンチの直下に想定される地質境界断層は,少なくともCal AD 130〜310以降,活動していない可能性があると考えられ,第1トレンチにおける須磨断層の最新活動時期に関する推定結果と矛盾しない。