谷底堆積物の形成年代を求めるため,腐植質堆積物を用いて放射性炭素年代を測定した。測定結果を堆積物ごとに示すと表4−8のようである。この表に示されるように,第V層〜第X層においては,各層で比較的バラツキの少ない測定値が得られている。1σ値をもとに,色別して明示しているように,各層の形成年代は上位より,第X層がCal AD 1280〜1450,第W層がCal AD 790〜1040,第V層がCal AD 130〜310と推定される。しかし,トレンチ法面下部の第T層と第U層より得られた年代測定結果は,第V層より上位の堆積物の測定値と整合していないことより,その測定値の信頼性は乏しいと考えられる。
なお,表4−8に示したIT2−C10試料は,肉眼観察では層区分が明確でなく,第X層に属する可能性もある。
以上より,第2トレンチの直下に想定される地質境界断層は,少なくともCal AD 130〜310以降,活動していない可能性があると考えられ,第1トレンチにおける須磨断層の最新活動時期に関する推定結果と矛盾しない。