また,谷の方向に直交する南北断面では,いずれの層準においても堆積物基底は,北側に比べて南側が急な傾斜を持つ谷壁となっている。
以下に,各層準の特徴をまとめて示す。
第T層
本トレンチ地点における最古の谷底堆積物であり,第U層あるいは第V層に覆われるが,それらとの境界面は高角度であり,現在の谷底堆積物の底面を形成している。φ20〜150mmの角礫を主体とする淘汰の悪い礫層であり,礫間はシルト質の中〜粗粒砂で充填される。第U層以降の堆積物よりも明らかに良く締まっている。
西側法面の南部においては,著しく粘土化した花崗岩破砕帯とφ5〜10mm礫を主体とする礫〜砂礫層とが互層状に分布する。また,長径:30〜50cm,短径:20〜30cmの花崗岩礫を含む。局部的に,腐植質粘土部が分布する。堆積物の境界面はN20°E,40°Sを示し,現在の谷壁と異なる方向性を持っているので,現在,形成されている谷地形よりも前に堆積したと考えられる。
第U層
φ2〜20mmの角礫が多い砂礫層であり,礫間はシルト質の中〜粗粒砂で充填され,φ10cm以上の角礫が点在する。また,腐植質砂層およびシルト質細粒砂層をレンズ状にはさむ。
第V層
比較的均質な礫混じりシルト質中粒砂層よりなり,第T層との境界はあまり明瞭でない。西側および東側法面においては明瞭な堆積構造は認められないが,φ2〜5mm程度の礫密集部分が,部分的に散在する。また,北側法面では上流〜下流にかけて,現在の谷の傾斜とほぼ同じ傾斜でゆるやかに傾斜する,層厚5〜10cm程度の礫の密集層が見られる。また,西側法面においては,厚さ約1cmのシルト層を挟むが,連続性は悪く,水平方向に1.5m程度が追跡されるだけである。
北側法面の最上部には,5〜10cm厚さの腐植質層が明瞭であり,トレンチ内においては良く連続する。
第W層
全体的に,他の層準に比較して粗粒であることが特徴的である。φ10〜50mm程度の角礫を主体としており,淘汰は悪い。堆積物底部の礫間は,青灰色の礫混じりシルトで充填されるが,それ以外では粗粒砂を主体とする。また,西側法面においては,腐植質層が直立したレンズ状に取り込まれて含まれる。東側法面にはφ50cm程度の角礫が含まれる。
また,下底面には5mm程度の厚さの鉄分沈着層が見られる。
第X層
西側法面北半部と北側法面に主に見られ,東側法面においては,上下位層との境界はやや不明瞭となる。ややシルト分を含む礫混じりの中粒砂が主体である。含まれる礫はφ5〜10mmの角礫が主体であり,最大径は20〜30mm程度である。
第Y層
現在の谷底沖積面を構成する谷底堆積物である。西側法面南部において厚く堆積し,構成粒子の粒度差によって層理が比較的明瞭に見られる。層理は,φ2〜5mm程度の細礫の密集層によって形成されている。礫間はシルト混じりの中粒砂で満たされる。