以下,主な処理ステップについて,設定したパラメータおよび処理結果の詳細を示す。
図4−8 データ処理フロー
表4−4 データ処理に使用した主なパラメータ
@ トレース編集,解析測線の決定,ジオメトリの設定およびCMPソート
データシートを基にノイズが卓越する不良トレースの除去,重複して収録したトレースの整理等の編集を行った。続いて,発震点と受震点の収録組み合わせおよびそれらの測量データから,「解析測線」を決定した。解析測線の概要を表4−5に,その位置を図4−9に示す。なお,個々の発震点,受震点,およびCMP(共通中間点)の座標は巻末にまとめた。
表4−5 解析測線概要
A プレフィルタ,位相補償および振幅回復
収録した生波形記録の例を図4−10の最上段に,プレフィルタ(バンドパスフィルタ),位相補償および振幅回復処理後の波形例を図4−10の上から2段目に示す。
B デコンボリューション
時間分解能向上およびノイズとなる多重反射波等を除去するため,タイムバリアントスペクトラルホワイトニングデコンボリューション処理を行った。図4−10の上から3段目に,処理後の波形例を示す。
C 静補正
静補正は特に実施していない。これはP波反射法地震探査の場合と異なり,S波初動走時を読み取ることが困難であるため,屈折波を用いたトモグラフィの解析による静補正量の算出ができないことおよび地表の標高差が小さいことによる。
D 速度フィルタ
表面波等のノイズを除去するため,見掛け伝播速度と伝播速度の発震点位置での切片時間を軸とする2次元領域でフィルタリングを行う速度フィルタ(時間によりフィルタリングパラメータが異なるタイムバリアントτ−Pフィルタ)を適用した。フィルタ処理後の波形例は,図4−10の上から4段目に示す。
E 速度解析
CMP重合処理によるSN比向上のため,定速度スタック法と速度スペクトル法を併用した速度解析を実施した。得られた重合速度分布を図4−11に示す。なお,速度解析は代表的なCMPにおいて実施した。
図4−11 重合速度分布
F NMO補正
速度解析で求めた重合速度を用いてNMO補正を行った。NMO補正後の波形例を図4−10の上から5段目に示す。
G 残差静補正
さらに,CMPアンサンブル内で,NMO補正後の波形に対して,CMP重合の効果を高めるため,残差静補正量を算出した。算出には1回当たりの最大時間シフト量を7msecと設定した自動算出を数回繰り返した。また,風化程度の差など,地表近傍の局所的な異常にはマニュアル的に残差静補正を施してSN比の向上を図った。図4−12に,算出した残差静補正量を示す。
図4−12 残差静補正量
H CMP重合
残差静補正後,CMPアンサンブル内の波形を重合し,SN比を向上させた重合後時間断面を作成した。重合後時間断面図を図4−13−1に示す。
I マイグレーション
反射面を正しい位置に戻すと共に,断層面等から発生する回折波を回折波発生源に集中させ,断面を鮮明にするためにFKマイグレーションを行った。マイグレーション処理後の時間断面図を図4−13−2に示す。なお,図4−11に示す重合速度分布をスムージングした速度モデルを作成し,マイグレーション処理に使用した。
J 深度変換
図4−11に示す重合速度を区間速度へ変換し,さらにスムージングした速度モデルを用いて,マイグレーション処理後の時間断面を深度断面に変換した。作成した深度断面図を図4−13−3に示す。また,深度断面について,断面の各トレースの振幅をその大きさに応じたカラーで表示した相対振幅表示深度断面図を図4−13−4に示す。この図は,図4−13−3(ウイグルトレース+バリアブルエリア表示)と比較し,負の値の振幅や振幅の微妙な変化が容易に認識可能で,細部の構造の判読が可能となる。