(1)トレンチ内の層序

図4−7は,トレンチの東側法面とボーリングを合わせた断面図である。この図からもわかるとおり,トレンチには,地表面下約4m以深に基盤の破砕された有馬層群が分布し,トレンチの北側に,神戸層群との境界が確認されている。

有馬層群および神戸層群を覆って,層厚4m程度の堆積物が分布しており,堆積物を累重関係,層相,14C年代値,テフラなどに基づき,下位から,T層〜X層の5層に区分した(図4−7)。

T層は,亜円礫〜円礫を主とし,マトリックスが砂質な河成段丘礫層であり,比較的固結度が高い。本層の最上部から,約90,000年前に降灰した阿蘇4テフラ(Aso ? 4)起源の角閃石が検出された。

U層は,亜角礫を主とする礫層であり,マトリックスは腐植質なシルト質砂層で,腐植層の薄層を挟在し,材化石を含む。本層は,断層の南低下側では厚く,北隆起側では薄いか欠如する。本層から採取した試料(C4)の14C年代は約27,000y.B.P.を示すが,この値は,上位のV層の14C年代値より若いことから信頼性が低い。

V層は,断層の北隆起側では礫混じりの腐植質砂層(Va層)から,断層の南低下側では腐植層および腐植質シルト層(Vb層)からなる。本層から採取したC1,C2,C3の3試料の14C年代は,いずれも測定限界を超えた値を示す。また,西側法面において,断層に挟まれて出現する腐植層はVa層に対比したが,14C年代は22,420±120y.B.P.という値を示し,V層から採取した他の試料の年代よりかなり若い値となっている。したがって,これは,上位のW層に挟まれる腐植層の可能性も考えられる。

W層は,主にシルト層からなり,下位の礫の多いWa層と上位の礫が少ないWb層に細分され,Wa層は断層の北隆起側のみに分布する。Wb層中には,三瓶池田テフラ(SI:約40,000年前)の降灰層準が認められる。

X層は,ローム質細礫層,ローム質砂層,およびその上位の茶褐色土壌からなり,下部で礫を多く含む。本層中には阪手テフラ(15,000〜16,000年前),および上部には鬼界アカホヤテフラ(K ? Ah:7,300年前)の降灰層準が認められる。また,本層は姶良Tnテフラ(At:約26,000〜29,000年前)に特徴的な火山ガラスを含むが,それは本層基底部から最上部まで散在して出現すること,さらに,トレンチの南方約80mの場所での試掘調査では厚さ20cm程度のAT層準が確認されたが,それと比較すると本層に含まれる火山ガラスの量が少ないことなどから,2次堆積したものであると推測される。