(4)静補正

静補正は,標高差や速度的および空間的に変化の大きい表層の影響を取り除く処理で,地表の発震点や受震点を,風化層などの低速度部が偏在しない基準面(一般的には平面)に見かけ上並べる,タイムシフトや標高シフトの処理である。これにより,共通発震点ギャザー(発震点を共通とするトレースの集まり,現場での収録データ)やCMPアンサンブル内での反射波の連続性を向上させ,後続する波形処理の効果を向上させることが可能となる。静補正には,表層付近に偏在する風化層の層厚や速度の変化の影響を補正する表層静補正と発震点や受震点の標高が異なる影響を補正する標高静補正がある。

表層静補正について,P波反射法地震探査の場合には,初動走時(地震波の最初の到達時間でP波の到達時間)をデータとして屈折法地震探査の解析をすることにより,表層付近に偏在する風化層の層厚や速度の変化を把握することが可能である。一方,S波反射法地震探査の場合には,S波の初動は,P波の初動以降に存在し,P波の初動やP波の反射波などにマスキングされることが多く,その走時を読み取ることは一般には困難で,S波速度に着目した風化層の層厚変化などの推定は難しい。このことから,今回はこれらを補正する表層補正は行わない。なお,静補正の概念を図3−8に示す。

図3−8 静補正の概念