第1トレンチでは,急傾斜を示すW層に,U層がアバットしており,変位はU層に及んでいない(図4−12−1、図4−12−2、図4−12−3、図4−12−4)ことから,本地点における六甲断層の最新活動時期は,U層堆積前と判断される。しかしながら,U層の14C年代値は約1270y.B.Pと下位層の年代値と逆転した値が得られた。
一方,第4トレンチでは,断層はIc層に変位を与えていないことが確認された(図4−15−1、図4−15−2)。Ic層は非常に多くの炭質物を含み,同トレンチ中の同層の14C年代は,約980y.B.P〜約250y.B.Pの値であるが,バラツキも大きく,年代と層位関係の逆転も生じている。このことは,再堆積による古い試料の混入と考えられ,最も新しい約250y.B.Pの値が,Tc層の堆積年代を示しているものと考えられる。
以上のことから,本地点における六甲断層の最新活動時期は,約650y.B.P(cal:AD:1270〜1420)以降,約250y.B.P(cal:AD:1490〜1950)以前となり,この活動は西暦1596年の慶長伏見地震時の可能性が高い。