(1)性状

第1〜第6のいずれのトレンチにも,断層崖基部において,南上がりの逆断層が確認され,断層面の傾斜角は東側の第6及び第1トレンチでは35°〜40°程度と低角度であるが,第2トレンチ,第5トレンチ及び第4トレンチでは45°〜50°と西側ほど高角度となり,最も西側の第3トレンチでは75°程度を示す。最も西側の第3トレンチでは,高角度の断層がフラワー状に発達しており,この断層が横ずれ成分を持つことを示唆している(図4−16−1図4−16−2図4−16−3)。

東側の第1,第6及び第2トレンチでは,礫層中に断層面があり,礫の定向配列が認められ,撓曲変形を伴う。西側の第5〜第3トレンチでは,比較的細粒な堆積物中にシャープな断層面が認められ,堆積物の変形も顕著である。

第6及び第1トレンチでは,分岐,合流する数条の断層面が認められ,断層下盤側の変形は顕著でないものの,断層面に挟まれる堆積物及び断層上盤側の各層は最大80°程度までの撓曲変形を示す。また,第6トレンチ東側法面では,断層面に挟まれているYb層とその上盤側のYb層とでは,見かけ上,南落ちとなっており,断層変位には,南上がりの逆断層成分のほかに横ずれ成分も伴っているものと考えられる。

第4及び第3トレンチでも,高角度フラワー状の断層で各層は南上がりの変位を受け,これと調和的な撓曲変形を示す。約32,000y.B.Pの14C年代値を示すYb層とX層及びX層中のATテフラとでは,前者の方がより強い変形を示している。