基盤岩は,有馬層群の流紋岩質凝灰岩と六甲花崗岩類の花崗岩からなり,これらはいずれも年代は中生代後期白亜紀とされている。
流紋岩質凝灰岩は白色〜青灰色の流紋岩角礫を多く含み,基質もほぼ同質であり,異種岩片が散在する。
花崗岩は,断層近傍では割れ目が発達し,組織が破砕され,斑晶が細粒に再結晶化して一部マイロナイト化している。
本地点では,六甲断層が北側の有馬層群と南側の六甲花崗岩類とを境している。
Y層は,本調査地点の第四紀層のうち最下位層であり,トレンチの南側に広く分布する低位段丘面(L2面相当)を構成していると考えられる。本層は,その層相,層位関係に基づき,下位からYd〜Yaの4層に細分される。
最下位のYd層は,多量の有馬層群起源の流紋岩角礫と少量の花崗岩礫とからなり,炭化木等の腐植物を多く含む。層厚は2.5m以上である。本層はトレンチ周辺の谷部にのみ分布しており,分布範囲は限られているものと考えられる。
Yc層は,良く円磨された礫径10cm程度の花崗岩起源の円礫層からなる。基質は黒色に変色していることが多く,層厚は最大で6m程度である。
Yb層は,流紋岩質細礫〜シルト質砂層からなり,腐植物片が散在する。本層の層厚は最大で3.5m程度であり,下位のYc層を欠く場所では,Yd層から漸移的に移化している。
最上位のYa層は,花崗岩質粗粒砂(マサ)及び粗粒砂からなる基質優勢の礫層からなり,シルト質砂の薄層を挟在する。礫は,花崗岩起源の亜角礫〜角礫からなり,層厚は最大で7m程度になる。
本層の14C年代値は,Yd層からは>45,000y.B.Pと測定限界を超える値が得られ,Yb層からは約36,000y.B.P〜約28,000y.B.Pの値が得られた。
X層は,主に塊状無層理の砂層からなり,礫径5cm以下の亜角礫が散在する。その分布はいずれのトレンチでも断層の下盤側のみに限られており,層厚は2m以上である。
本調査地点で検出されるテフラはATテフラと坂手テフラ(約1.5万年前〜1.6万年前)である。第6トレンチではATテフラ降下層準はYa層中部〜上部付近に,第3トレンチではX層中に層厚40cm程度のATテフラ純層が認められ,第1トレンチではX層基底付近にATテフラ起源の火山ガラスの産出下限が認められる。また,坂手テフラ(約1.5万年前〜1.6万年前)降下層準は,第2トレンチのX層中部に認められる。したがって,Yb層,Ya層及びX層は約3万年前〜1.5万年前の堆積物である。
W層は,ローム層〜ローム質砂層からなり,最下部に基質がローム層砂層からなる角礫層を伴う。層厚は最大で1m程度である。第6及び第1トレンチのみに分布し,最下部角礫層の堆積面が約50°〜60°に傾斜している。本層の最上位付近にはK−Ahテフラ降下層準が認められる。また,W層とVb層との間に層厚5cm〜8cmほどの腐植層が分布し,同腐植層は約750y.B.P〜約650y.B.Pの14C年代値を示す。
V層は,第6及び第1トレンチのみ分布し,下部の礫層主体のVb層及び上部の砂層主体のVa層からなる。W層のローム層を覆って分布しているが,断層崖の基部のみに分布し,層厚は最大で1m程度である。V層基底部では,Vb層の円礫層が幅50cm程度のチャネル状に3〜4条平走して分布しており,このチャネル状の礫層は細長く連続性が良いこと,礫径がそろっていること,礫の表面にマンガン鉱物が付着して黒色を呈することなどから暗渠である可能性が考えられる。
U層は,第6及び第1トレンチの断層崖斜面のみに分布し,V層及びW層にゆるやかにアバットしていて,層厚は最大で2m程度である。主にロームの二次堆積物からなるローム質砂層で,薄い土壌が狭在している。14C年代値は1260±40y.B.Pの値が得られているが,この年代値は下位層の値と逆転しており,下位層の二次堆積物と考えられる。
T層は,現在の谷地形ができてからの堆積物であり,ほぼ谷の形状に沿って分布している。下位からその層相,分布の違い等に基づき,Tc層〜Ta層の3層に区分される。最下位のTc層は現在の谷底に層厚約2m程度で分布し,下位層を開析したチャネル状の谷を埋没しており,炭化木等の腐植物を多く含む。14C年代値は,約4,000y.B.P〜約250y.B.Pを示し,チャネル状の谷部における下位ほど古い値を示す。Tb層はTc層を覆って分布し,礫を含まず,V層〜W層のローム質砂層及びローム層の二次堆積物であり,層厚は最大で1m程度である。Ta層は現河床礫層であり,現在の沢底で表層の1m以浅に分布している。