以下、主な処理ステップについて、設定したパラメータおよび処理結果の詳細を示す。
@トレース編集、解析測線の決定、ジオメトリの設定およびCMPソート
データシートに基づきノイズが卓越する不良トレースの除去、重複して収録したトレースの整理等の編集を行う。続いて、発振点と受振点の収録組み合わせおよびそれらの測量データから、「解析測線」を決定した。解析測線の概要を表3−1−5に、その位置を図3−1−17に示す。
Aプレフィルタ、位相補償および振幅回復
収録した生波形記録の例を図3−1−18−1、図3−1−18−2、図3−1−18−3に、プレフィルタ(バンドパスフィルタ)、位相補償および振幅回復処理後の波形の例を図3−1−19−1、図3−1−19−2、図3−1−19−3に示す。また、プレフィルタ等で使用した主なパラメータを表3−1−6に示す。
Bデコンボリューション
時間分解能向上およびノイズとなる多重反射波等を除去するため、タイムバリアントスペクトラルホワイトニングデコンボリューション処理を行った。デコンボリューションテストの例を図3−1−20−1、図3−1−20−2、図3−1−20−3に、最終的に採用した処理パラメータを表3−1−7に示す。また、処理後の波形例を図3−1−21−1、図3−1−21−2、図3−1−21−3に示す。
C静補正
静補正量を算出するため、P波の初動走時を読み取り、屈折波を用いたトモグラフィの解析を実施した。トモグラフィの解析結果である表層近傍の速度分布を図3−1−22−1、図3−1−22−2、図3−1−22−3に、解析に用いた主なパラメータを表3−1−8にそれぞれ示す。
なお、A測線およびB測線においては、地下埋設物の影響や周辺ノイズに起因するものと考えられるが、初動が明瞭でないデータが多い。このため、初動が読み取れたのは、オフセット距離200m程度までのデータであり、十分な探査深度を有しているデータセットとはいえず、得られた表層速度分布の信頼性は低い。また、C測線においてもCMP番号1から同約60までの区間は、受振のみの区間であり、屈折波の波線密度が低く、得られた表層速度構造の信頼性が低いこと、およびこの区間外の表層速度構造がほぼ水平成層に近く、各測点における表層静補正量の差が小さいと予想されることを考慮し、いずれの測線においても屈折波のトモグラフィ解析により得られた表層速度分布から表層静補正量を算出することを行わなかった。ここでは、参考データとして表層速度分布を示すに留める。
D速度フィルタ
A測線のデータに対し、表面波等のノイズを除去するため、見掛け伝播速度と伝播速度の発振点位置での切片時間を軸とする2次元領域でフィルタリングを行う速度フィルタ(時間によりフィルタリングパラメータが異なるタイムバリアントτ−Pフィルタ)を適用した。フィルタ設計の基準を表3−1−9に、フィルタ処理後の波形例を図3−1−23に示す。
E速度解析
CMP重合処理によるSN比向上のため、定速度スタック法と速度スペクトル法を併用した速度解析を実施した。得られた重合速度分布を図3−1−24−1、図3−1−24−2、図3−1−24−3に示す。なお、あるCMP範囲で読み取った重合速度については巻末にまとめて掲載した。
FNMO補正
速度解析で求めた重合速度を用いてNMO補正を行った。NMO補正後の波形例を図3−1−25−1、図3−1−25−2、図3−1−25−3に示す。
G残差静補正
さらに、CMPアンサンブル内で、NMO補正後の波形に対して、CMP重合の効果を高めるため、残差静補正量を算出した。算出には1回当たりの最大時間シフト量を5msecと設定した自動算出を3回以上繰り返した。残差静補正の処理パラメータを表3−1−10に、算出した残差静補正量を図3−1−26−1、図3−1−26−2、図3−1−26−3に示す。
HCMP重合
残差静補正後、CMPアンサンブル内の波形を重合し、SN比を向上させた重合後時間断面を作成した。重合後時間断面図を図3−1−27−1、図3−1−27−2、図3−1−27−3に示す。
Iマイグレーション
反射面を正しい位置に戻すと共に、断層面等から発生する回折波を回折波発生源に集中させ、断面を鮮明にするためにFKマイグレーションを行った。マイグレーション処理後の時間断面図を図3−1−28−1、図3−1−28−2、図3−1−28−3に示す。なお、先の図3−1−24−1、図3−1−24−2、図3−1−24−3に示した重合速度分布をスムージングした速度モデルを作成し、これを用いてマイグレーション処理を行った。
J深度変換
先の図3−1−24−1、図3−1−24−2、図3−1−24−3に示す速度解析により得られた重合速度(RMS速度)を区間速度へ変換し、さらにスムージングした速度モデルを用いて、マイグレーション処理後の時間断面を深度断面に変換した。作成した深度断面図を図3−1−29−1、図3−1−29−2、図3−1−29−3に示す。また、深度断面について、断面の各トレースの振幅をその大きさに応じたカラーで表示した相対振幅表示深度断面図を図3−1−30−1、図3−1−30−2、図3−1−30−3に示す。この図は、先の図3−1−29−1、図3−1−29−2、図3−1−29−3(ウイグルトレース+バリアブルエリア表示)に比較し、負の値の振幅や振幅の微妙な変化が容易に認識可能で、細部の構造の判読が可能となる。