(代表:岸本兆方(京都大学防災研究所教授))が実施された。山崎断層「地震予知テストフィールド計画」では, 地震活動, 断層を跨いで設けられた安富観測坑での地殻変動測定(伸縮計・傾斜計),測量,地磁気,地電位差,地下水,放射線,気象要素など様々な項目についての観測・研究が実施された。テストフィールド計画終了後は, 規模が縮小されたものの,観測・研究は現在も続けられている。また, 平成7年度からは,京都大学防災研究所,国土地理院がGPSによる測量を,平成9年度からは, 地質調査所(現独立行政法人産業技術総合研究所)が安富町内に設けた地下水位観測施設において地下水,歪み及び地震などの観測を実施している。平成12年度からは,科学技術庁防災科学技術研究所(現独立行政法人防災科学技術研究所)が山崎町内に設けた山崎地震観測施設において,広帯域地震計による観測も開始されている。
「地震予知テストフィールド計画」が進められていた1984年5月30日に,M5.6の山崎断層の地震 ※1 が発生した。この地震では姫路で震度4を記録し,死者こそ出なかったが山崎断層帯沿いの地域を中心とし随所で軽微な被害が生じた。
1984年の山崎断層の地震は,暮坂峠断層の直下で発生しており, 震源位置は安富観測坑の南方3km,深度20kmであった。
この地震は,事前の予知こそできなかったものの,地震後の観測データの解析から,
地震活動,地殻の伸縮・傾斜,地電位,地磁気などに前兆とみられる変化が認められた(図7)。
このことは,中規模地震であっても,適切な観測網を設けて観測・データ解析を行なえば,地震の前兆を捉えることが可能であることを示唆しており,今後の地震予知に向けての貴重な成果といえる。
図7 1984年山崎断層の地震に関して地震活動, 地殻変動, 磁場, 地電位などに現れた前兆的変動
(京大防災研究所地震予知研究センター)
※1 山崎断層の地震:発震機構は,左横ずれ型。姫路で 震度4を記録。被害は, 軽度の家屋
損傷や商店の棚の品物落下程度。本震後の余震活動は,暮坂峠断層に沿って発生。