断層活動に伴う変位地形(低断層崖や右横ずれを示す谷筋の屈曲)は,高位段丘U面からなる台地上の随所にみられ(図5−18, 表5−9),断層線上には高位段丘面を構成する地層まで切る断層露頭を4ヵ所確認した。
草谷断層では,平成11年度にトレンチ調査を実施しており, その結果, 草谷断層の最新活動時期が約1000年〜1700年前の間の可能性が高いことが判明した(図5−19、図5−20)。一方,最新活動に先立つ活動により形成されたと推定される断層も確認できたが,年代情報が得られなかったため,活動間隔を特定するまでには至らなかった。ただし,断層変位の及んでいる地層は,固結度や層相などから判断して,沖積層(約1万年前以降の地層)と推定されることから,活動間隔は数千年程度の可能性がある(表5−9)。
表5−9 草谷断層の諸元
図5−19 草谷断層《稲美町草谷》トレンチ南西側壁面模式図(引用:兵庫県(2000))
図5−20 草谷断層《稲美町草谷》トレンチ北東側壁面模式図(引用:兵庫県(2000))
図5−19の南西側壁面では, 断層(F−1)はC層(14C年代値1700年〜2180年前)を切り,B層(14C年代値950年〜1000年前)に覆われている様子を確認した。一方,断層によ り引きずられた格好で分布するD層 (14C年代値1530年前〜2520年前)については, F−1断層の活動に伴って形成された可能性が高いと評価し, 最新活動時期を, 1000年〜1700年前の間と推定した。
この壁面では,最新活動に先立つ1回前の活動は確認できなかったが,反対側の北東側壁面(図5−20)では,E層下部を切りE層上部に覆われる断層(F−2断層)が,1回前の活動によって形成された可能性がある。ただし,E層(固結度などから沖積層と推定される)の年代値が直接が得られなかったため,活動間隔は詳しく求められず,数千年程度の可能性を指摘するにとどまる。