当断層沿いには,加古川や志染川などの大きな河川がつくる沖積低地が広く発達しているため,加西市粟生町〜小野市池尻町,三木市大村〜三木市本町にかけては断層が地下に伏在し,断層位置を精度良く特定することが困難である。また,断層露頭を数カ所で確認しており,そのうち小野市池尻町では大阪層群中の砂礫層を切る明瞭な断層が存在する(図5−17)。
三木断層では, 平成11年度にトレンチ調査に先立ち断層伏在部で反射法地震探査 (S波探査)を実施しており,その結果,断層推定線付近において,断層運動に起因するとみられる地層の変形構造が検出された。
平成12年度には,その近傍でトレンチ調査を実施し, 約2450年前の地層中に断層変位を含む可能性のある大きな変形構造を確認した。また,この変形構造を挟んでボーリング調査を実施したところ,地下8m以深の地層に不連続性が認められた。この変形構造が断層変位の表れである可能性が高い。
一方,約1700年前の地層には大きな乱れが認められなかったことから,三木断層の最新活動時期は,1700年〜2450年前の可能性がある(表5−8,図5−17)。
表5−8 三木断層の諸元
図5−17 三木断層《小野市大島町》トレンチ北西側壁面および周辺の推定地質断面
図5−17は,トレンチ北西側壁面の観察結果と,トレンチ付近で実施したボーリング調査の結果から推定される地層の対比に基づいて作成した断面である。図中,地層境界を実線で表した部分はトレンチ壁面の観察結果により設定した地層境界,周辺の点線部分はボーリング調査により推定した地層境界を示す。
D層,E層(14C年代値2450年 〜3900年前),F層に大きな擾乱を与えているゾーン(F−1,F−2)が認められた。このゾーンはC層以上には及んでいなかった。ちなみにC層の上位に分布するB層の14C年代値は1700年前である。
トレンチ壁面範囲の破線は, 礫の配列が顕著なゾーンやE層が引きずられているゾーンを示したものであるが,これらの線が地下から延びている断層の現れなのか,液状化による地層の擾乱によるものか,トレンチ壁面の観察結果だけではそれらの判定は難しい。このため,このゾーンを挟んで基盤岩まで達するボーリング調査を実施した。その調査結果(地下8m以深の地層に不連続性が認められたことなど)を考慮すると,断層変位の表れである可能性が高いと判断される。したがって最新の活動時期は,1700年〜2450年前の間の可能性がある。