断層活動に伴う変位地形は明瞭であり,特に加西市琵琶甲町付近の高位段丘U面上の直線的な低断層崖と,それを挟んでの谷筋の系統的な屈曲は明瞭である(図5−14,表5−7)。この断層線上には高位段丘U面を構成する地層を切る断層露頭を確認しており,トレンチ調査も断層露頭の近傍で実施した。
トレンチ調査の結果,琵琶甲断層の最新活動時期は,およそ1560年〜2240年前の可能性が高いことが判明した。一方,最新活動に先立つ活動により形成された断層も確認できたが,信頼度の高い年代値が得られなかったため, 活動間隔を特定するまでには至らなかった。
ただし,断層変位の及んでいる地層は,固結度や層相などから判断して,沖積層(約1万年前以降の地層)と推定されることから, 活動間隔は数千年程度の可能性がある(表5−7, 図5−15)。
表5−7 琵琶甲断層の諸元
図5−15 琵琶甲断層《加西市琵琶甲町》トレンチ北西側壁面模式図(引用:兵庫県(2000))
最も上方に延びる断層(F−1)は,D層(14C年代値2240年〜3780年前)を切り,その上位のC層(14C年代値1350年〜1560年前)に覆われているように見える。したがって,琵琶甲断層の最新活動時期は, 1560年〜2240年前の間とみられる。一方,F−1のすぐ南側(断面図左側)には,E層(年代未詳.固結度などから沖積層(約1万年前以降の地層と推定される))を切りD層に覆われるF−2断層が確認できる。この断層は, 最新活動に先立つ回前の活動で形成されたとみられるが,E層(固結度などから沖積層と推定される)の年代値が直接得られなかったため,活動間隔は詳しく求められず,数千年程度の可能性を指摘するにとどまる。
なお,F層(大阪層群上部亜層群に相当。数十万年前の地層とみられる)は,全体に緩やかに傾斜する一方,幅10〜20cmの断層粘土帯が認められた。このことは,F層が過去に何度も繰り返し断層運動を受けてきたことを示唆している。