断層活動に伴う変位地形は明瞭であり,随所で左横ずれ変位を示す谷筋や尾根筋の屈曲や,段丘面を切る低断層崖が認められる。特に,切窓峠から山崎町青木付近にかけての谷・尾根の屈曲は明瞭である(図5−6,表5−4)。なお,青木付近から山崎町山田の間は, 断層が菅野川沿いの沖積低地下に伏在するため,断層線の詳細位置の確認は困難である。断層に沿っては,所々で同方向に延びる破砕帯(超丹波帯の頁岩・砂岩中)も確認される。
土万断層では,トレンチ調査は青木地区で1箇所実施したが,主断層の確認はできなかった。ただし,トレンチ壁面に出現した45000年前以前の地層からおよそ3000年前に至る地層中には,液状化や地層の変形が随所に認められ,土万断層の近傍で様々な時期に大きな地変が発生したことが推定された。最新活動時期は, 3570年前の年代値が得られている大きな材が,周辺の腐植土とともに著しく変形していることから, 少なくとも3570年前以降の可能性がある(表5−4,図5−7)。
表5−4 土万断層の諸元
図5−7 土万断層《山崎町青木》トレンチ南東側壁面模式図(引用:兵庫県(1996))
トレンチ壁面には,45000年前以前の地層から現在の耕作土に至る様々な時代に形成された地層が出現した。それぞれの地層は,図5−7に示したように,堆積時の成層構造が大きく乱され,随所に液状化や変形が認められたものの,主断層は表れなかった。そのため,活動時期を直接に求めることはできなかったが, B層(14C年代値3140年〜4750年前)中に挟まれる3570年前の年代値が得られている大きな材が,周辺の腐植土とともに流動したような変形構造が認められることから,少なくとも3570年前以降に土万断層が活動した可能性がある。その他, C層(14C年代値5820年〜6790年前)における噴礫や,C層以下の地層中にも地層の変形構造や小断層が認められることから,過去に何度も大きな地変を受けてきたことが推定される。