断層活動に伴う変位地形は明瞭であり,随所で左横ずれ変位を示す谷筋の屈曲や, 段丘面を切る低断層崖が認められる(図5−2, 表5−3)。断層線上では, 数ヶ所で基盤岩中に破砕帯が確認されている(図5−2)。
大原断層では,トレンチ調査は3箇所で実施されている。その結果,大原断層の最新活動時期は,今から約1000年前の前後数百年の間であった可能性が高く,西暦868年の播磨地震に対応する可能性があると推定されている。
一方,活動間隔については,古町トレンチ(遠田ほか, 1995)では不明確ながらも2500年程度, 岡山県(1996)の調査では, 平均変位速度値と西町トレンチ結果から得られた横ずれ単位変位量から計算して,1600年〜2600年と推定されている(表5−3,図5−3、図5−4)。
なお,断層末端部付近の勝田町豊成のトレンチでは新しい活動は確認されておらず,活断層としての大原断層は,これより北西方には延びていない可能性が高いと評価されている(図5−5)。
表5−3 大原断層の諸元
図5−3 大原断層《大原町古町》トレンチの北西側壁面模式図(引用:遠田ほか(1995))
最も上位まで延びる断層(F‐1)が,MS2層(14C年代値1299年前)を切り,MS1層(14C年代値164年前)以上の地層で覆われていることから,最新活動時期は,164年前以前,1299年前以降と推定している。
その他,G2b層(1299年〜3019年前の地層)までを切る断層(F‐2),G3層途中まで延びる断層(F‐3)及びG4層を切りG3層に覆われる断層(F‐4)などが認められたことから,本トレンチでは,堆積層を切る断層活動は4回生じた可能性があるとしている。
G3〜G5層の年代は直接得られていないため,直接活動間隔を求めることはできない。しかし,これらの地層が,固結度などから沖積層と推定(堆積層基底の年代を1万年前と仮定)されることから, 1万年間に4回の活動が推定されるとみなし, 活動間隔は2500年前後と考えられるとしている。
図5−4 大原断層《大原町西町》トレンチの北西側壁面(a図)と底面のスケッチ(b図)(引用:岡山県(1996))
断層は,G3層(14C年代値910年〜1260年前)の途中まで延びるが,その上のM2層に覆われている。そのため,最新活動時期は910年前から1260年前の間と推定している。
また, 断層を挟んで向かって右側に分布するG2層(14C年代値1570年〜4820年前)には,詳しくみると礫が断層に沿って引きずられた構造が認められ,それがG3層により不整合に覆われている様子が観察された。このことから, G2層の堆積後からG3層堆積前に, 最新活動に先立つ活動があった可能性を指摘している(岡山県,1996)。
当トレンチでは,最新活動時の平面的な観察(図4(b)図:(a)図の壁面をG2層の深さまで断層に沿って奥に掘り込み,断層沿いの地質分布を平面的に観察した図)により,1回の断層変位による左横ずれ量を1.6〜2mと推測している。
※ Aトレンチの南側に隣接して掘削されたBトレンチにおけるM1層の14C年代は,11500y.B.P.と求められている.
図5−5 大原断層《勝田町豊成》トレンチの東側壁面模式図(引用:岡山県(1996))
大原断層の末端部付近にあたり,地形・地質調査から推定される断層位置で掘削したトレンチである。当トレンチでは,破砕された基盤岩(古生代の泥質片岩)直上のG1層をはじめM1層(14C年代値10620年〜11500年)以上の地層に変位を与える断層は確認されなかった。