(2)活動性評価に関する情報

活断層としての山崎断層帯は, 1991年に発刊された新編日本の活断層にまとめられている(活断層委員会, 1991)。新編日本の活断層に収録されている山崎断層帯の評価と,トレンチ調査及び新編日本の活断層発刊後実施された活断層調査の成果について,以下調査ごとに要約する。

《新編日本の活断層(活断層研究会,1991)》

山崎断層系は,岡山県勝田郡勝田町から兵庫県三木市にかけ北西−南東方向に延び活断層系であり,総延長は87kmに達する。山崎断層系は,西から大原断層,土万断層,安富断層,暮坂峠断層,琵琶甲断層,三木断層から構成される(表2−3図2−2)。

そのうち,大原断層,土万断層,安富断層,琵琶甲断層は,系統的な尾根・谷の屈曲(左横ずれ型)が直線的に連続するなど変位地形が明瞭であることから,確実度Tの活断層であり,暮坂峠断層,三木断層は変位地形がやや不明瞭なことから,確実度Uと評価されている。一方,活動度に関しては,直接的な証拠には欠けるが,高位段丘などを変位基準として求めた平均変位速度値から判断し,B級(0.1〜1.0m/1000年)と評価されている(表2−3)。

《安富断層のトレンチ調査(岡田ほか, 1979),(佃ほか, 1979),(岡田ほか, 1987)

安富町安志地区において,安富断層を対象としたトレンチ調査が実施された。その結果, 安富断層の最新活動時期は, 7世紀後期から12世紀の間に起こっていることが判明した。このイベントは, 868年の播磨地震(M7.0以上)である可能性が高い。また,この活動以前にも2回の活動履歴が読み取られたものの活動時期は不明確であり,活動間隔は短くて1000年程度であるが,数千年の可能性が高いと評価された。

《大原断層のトレンチ調査(遠田ほか, 1995)》

大原町古町地区において,大原断層を対象としたトレンチ調査が実施された。

その結果,大原断層の最新活動時期は,164年前から1299年前の間に起っており,このイベントが868年の播磨地震(M7.0以上)である可能性があると判断された。

また,この活動以前にも3回の活動履歴が読み取られ,活動間隔は不明確ではあるが2500年程度と推定された。

《平成7年度 山崎断層帯に関する調査(兵庫県, 1996)》

本調査では,安富断層と土万断層においてトレンチ調査が実施された。

安富断層は,安富町安志地区でのトレンチ調査により,約24000年前のAT火山灰層が何回もの断層活動により,上下に約2m変位していることが判明した。最新活動時期は,710年前以前, 1600年前以降とみられることから,岡田ほか(1979)の結果と同じく,868年の播磨地震の可能性があることがわかった。活動間隔は,千数百年から二千数百年の可能性がある。

土万断層は,山崎町青木地区でのトレンチ調査により,45000年前以前の地層から2000年前より新しい地層まで出現し,様々な層準で液状化や小断層による地層の擾乱が確認された。しかし,主断層と見られる断層を捉えることができなかったため,最新活動時期や活動間隔を求めることはできなかった。

一方,これまで確実度Uとされていた暮坂峠断層については,夢前町護持地区で左横ずれを示す明瞭な変位地形が観察されたことから,当断層も活断層である可能性が高いと評価された。

《平成7年度 山崎断層系大原断層に関する調査(岡山県, 1996)》

大原断層西町地区で実施されたトレンチ調査により,大原断層の最新活動は,910年前から1260年前の間に生じていることが判明し,これが868年の播磨地震である可能性が高いと評価された。また,1回前の活動は,断層に沿う地層の変形と判断し,1570年前から4820年前の間に推定された。

また,トレンチ底面に表れた砂礫層の左横ずれ量から判断し,断層の単位変位量は,1.6〜2.0m,活動間隔は1600〜2600年と評価している。

一方,大原断層西部の大原町金谷地区と勝田町豊成地区におけるトレンチ調査では,約1万年前以降の地層を切る断層は確認されなかったため,最新活動がこの地域にまで及ばなかったか,断層末端付近で変位量が小さく,地表には明瞭な形で表れなかった可能性が指摘された。

《平成10年度 山崎断層帯に関する調査(兵庫県, 1999)》

これまで断層の詳しい性状や活動履歴がわかっていなかった山崎断層帯東部(琵琶甲断層,三木断層)を対象に,地形・地質調査が実施された。

その結果,琵琶甲断層,三木断層とも高位段丘面上の低断層崖(北側上がりのセンスを持ち左横ずれを示す)に沿って,高位段丘を構成する地層を切る断層露頭が確認されるとともに,山崎断層とほぼ直交する位置に新たに活断層(草谷断層)が確認された。

《平成11年度 山崎断層帯に関する調査(兵庫県, 2000)》

本調査では,琵琶甲断層,草谷断層及び暮坂峠断層においてトレンチ調査が実施された。

琵琶甲断層は,加西市琵琶甲町でのトレンチ調査により,最新活動時期が1560年〜2240年前の間の可能性があることが判明した。また, 稲美町草谷で実施された草谷断層のトレンチ調査では,最新活動時期が1000年〜1700年前の可能性が高いことが判明した。一方,夢前町護持で実施された暮坂峠断層のトレンチ調査では,千数百年前以降に活動した可能性は高いが,副次的な活動による可能性もあることが指摘された。

表2−3 山崎断層帯を構成する断層の諸元(活断層研究会,1991)

図2−2 山崎断層帯を構成する活断層(活断層研究会,1991)