調査地域内のうち,東部に分布する六甲(桜が丘を含む),清荒神,塩尾寺及び小林のいずれの断層も,中位段丘面形成以降の活動があったことがほぼ確実である。これらの断層のうち,六甲断層については,長さが10kmに達し,右横ずれ地形も明瞭であり,完新世の沖積段丘面にも変位を与えている可能性が高い。
調査地域中部においては,有野,唐櫃,山田,射場山,湯槽谷,大月及び五助橋の各断層が分布しているものの,いずれもリニアメントのランクが低く,新しい地質時代における活動を示唆する地形・地質データに乏しい。また,「近畿の活断層」(2000)では,有野断層,射場山断層,湯槽谷断層及び大月断層については,組織地形であるとしている。
一方,調査地域西部に分布する淡河,柏尾谷及び古々山の3断層については,新しい時代における活動の有無は不明であるが,本調査では,いずれもリニアメントのランクが高く,比較的系統的な右横ずれ地形が認められること,都市圏活断層図(1996)などでは,柏尾谷断層を活断層としていることから,新しい時代における活動があった可能性もある。
以上の調査結果を踏まえると,本地域における今後の活断層調査としては,まず,六甲断層に関して,最新活動時期等の活動履歴,特に1596年慶長伏見地震時における連動性などを明らかにすることを目的に,トレンチ調査を実施する必要があると考えられる。
清荒神断層,塩尾寺断層及び小林断層については,断層通過位置周辺の人工改変が著しく,人口密集地となっており,トレンチ調査用地の確保が困難と考えられるため,P波あるいはS波による反射法地震探査,ボーリング調査により断層の活動性を評価する必要がある。
淡河断層,柏尾谷断層及び古々山断層については,既往文献では上述の各断層よりも活断層の可能性がやや低いとされているものの,前述のように,本調査では最近における活動性を否定できず,この場合,これらの3断層は有馬―高槻断層帯や六甲山地南東縁断層帯とは別の起震断層帯になることも考えられる。この意味において,これら3断層の活動性の評価は重要と考えられ,トレンチ調査等により活動履歴を明らかにする必要がある。