(1)主な地形地質情報とその特徴及び根拠

【地質概要】

調査地域は,中生代白亜紀以前に形成された舞鶴帯・超丹波帯・丹波帯などの堆積岩類(粘板岩・頁岩・砂岩)を主体とした古期岩類や,白亜紀の大規模な火成活動により形成された有馬層群・相生層群・播磨花崗岩などの酸性火成岩類を基盤とし,基盤岩を覆って大阪層群・段丘層など主に第四紀に形成された新期堆積層が分布している。

基盤岩類は,調査地域の西部から南西部に広がる山地に露出しており,これに対し大阪層群・段丘堆積層などは,調査地域西端部の市川沿いの台地や,調査地中心部から南東部を占める加古川流域に広がる台地に広く分布している。その他,調査地東部に古第三紀の神戸層群,山地内の谷沿いや山麓斜面に崖錐性堆積物(更新世後期〜完新世),河川沿いの低地に沖積層が分布している。    

当地域に分布する新期堆積層は,大阪層群,段丘層,沖積層,崖錐性堆積物に分けられる。このうち大阪層群は,新第三紀鮮新世末から第四紀更新世前期に形成された下部亜層群に相当する明石累層と,更新世中期に形成された上部亜層群に相当する明美累層に区分されている(表3−1−5)。そして,明美累層の最終堆積面が高位段丘面と考えられている。しかし,大阪層群の区分は研究者により異なり,またほとんどが砂礫層からなる当地域では,直接の年代資料が得にくいことなどから両者を区分することは困難である。そのため,本報告で便宜的に高位段丘を構成する地層については,高位段丘層とし,同層下位の地層については大阪層群として一括した。

表3−1−5 播磨地域の地質・地史

【活断層】

地表踏査により,山崎断層帯東部地域の活断層位置,活動状況について多くの新しい知見が得られた。ここでは,新たに得られた断層露頭に関する知見を中心に,各断層の特徴を紹介する。本文中の図,写真位置は図3−1−38付図2−1付図2−2:活断層評価図の縮小版)に表示した。

《琵琶甲断層(a)》 

琵琶甲断層(a)に沿って,空中写真判読結果の項で述べたように明瞭な横ずれ地形を伴う低断層崖が発達している(写真1)。この崖沿いの加西市琵琶甲町では,尾崎ほか(1995)により,明石累層(大阪層群下部相当層)を切る断層露頭がすでに報告されている。今回の調査では,この露頭をさらに詳しく観察し,断層崖に沿って高位段丘下位面を構成する地層が傾斜するとともに,高位段丘構成層を明瞭に切り地表にまで達する断層(走向・傾斜:N71°W,60°Nの見かけ上逆断層)を確認した(写真2−1写真2−2写真2−3)。

一方,琵琶甲断層(a)の東方,野条から中野にかけては,面上の人工改変が進んでいるため,断層露頭の確認は困難となる。

《琵琶甲断層(b)》

琵琶甲断層(b)に沿って,空中写真判読結果の項で述べたように横ずれ地形を伴う低断層崖が発達している(写真3)。この低断層崖にそっては,面を構成する砂礫層・シルト層が南西側に10°以上傾斜する撓曲構造が見られ,小野市粟生西方の露頭では,高位段丘上位面を構成する礫層・砂質シルト層が急傾斜し北西−南東方向の小断層で複雑に切れているようすが観察された(写真4)。

《三木断層》

三木市市街地北西部の高位段丘上位面には,高度差20m程度で北西−南東方向にのびる断層崖(撓曲崖)がみられる(写真7)。この崖の延長部にあたる小野市市場では,大阪層群を切る北西−南東方向の断層(走向・傾斜:N60°W,75°E,写真5−1写真5−2参照)が確認されたほか,三木市大村北方では,高位段丘上位面を構成する赤褐色の砂礫層が南西側に10°前後の傾斜で撓曲するようすも観察された(写真6)。

《三木断層延長部》 

三木断層の南東側延長部,三木市役所が位置する中位段丘面や明美丘陵の高位段丘下位面には,断続的ながら活断層の可能性があるリニアメントが三木市志染町付近まで追跡され,三木市三木山総合運動公園の北東では,大阪層群の砂礫層の撓曲構造(走向・傾斜:NW‐SE,20°NE,上下変位量:約5m)が確認された(写真8)。

《(仮称)草谷断層》

空中写真判読結果で述べたように,今回の調査で稲美町草谷から三木市別所町興治にかけ,北東−南西方向(山崎断層帯の方向にほぼ直交するかたち)に約2kmにわたって,高位段丘下位面中に断層変位地形とみられる高度差3〜5m程度(南東落ち)の低崖が確認された(写真9写真10)。この低崖に沿う三木市別所町興治南方では,大阪層群と高位段丘下位面の礫層とが断層(走向:北東−南西,傾斜:55°北西,上下変位量:約5m)で接する露頭が確認された。この断層は見かけ上逆断層であるが,断層面にはほぼ水平方向(7°〜8°南西落ち)の明瞭なストリエーション(条線)が観察されることから(写真11−1写真11−2図3−11−1),実際の動きは水平ずれが主体(上下1に対し水平8程度)の断層であると推定される。

《暮坂峠断層延長部》

暮坂峠断層延長部は,空中写真判読結果の項で述べたように,基盤山地に位置しているため,鮮明なリニアメントが多数みられる(写真12写真14)。今回の地表踏査では,これらリニアメントに沿って,基盤岩(有馬層群の流紋岩類)中に断層あるいは破砕帯が数カ所で確認されたが(写真13),崖錐性堆積物など新期の堆積層を切る断層露頭は確認されなかった。