・[最新の活動]
断層活動時期はB−1層堆積後,A−2層上部(灰色の旧耕作土)堆積前である。
西面F−1断層及び東面f−1断層によってB−1層は明瞭に切断されており,A−2層とB−1層との境界部の変位変形はそれに比べやや不明瞭である(この境界部の年代は1,600〜1,800年Bpを示す)が可能性は大きい。
またA−2層の上部(A−2u)は概ね水平に堆積しているが,そのA−2層の年代はB−1層との境界部を除いて地層の14C濃度が薄く正確な年代値が得られなかった(年代が逆転している)。A−1層に含まれる炭化物や木片の年代は,270〜710年Bpを示し(A−1層は人工的な盛土の可能性がある),B−1層上部の年代は1,700〜1,940年Bpを示す。
よって活動時期は,約1,700年Bp以降は確実であると考えられ,(約1,600年BP以降の可能性は大きい),活動時期の上限は710年Bpとなる。
これらのことから最新イベントは,岡田ほか(1987)によって指摘されている播磨地震(西暦 868年)に相当する可能性が大きいと判断される。
・[一回前の活動]
断層の活動時期はB−1層堆積中に活動し,B−1層最上部に覆われる可能性がある(主断層から延びる西面F−2断層及び東面f−2断層の活動)。
しかし地層の観察からこの断層は,条線の終点が不明瞭であるなど,F−1断層の活動と同時期の可能性も考えられ不確実であるが,B−1層上部(1700〜2290年Bp)の変位量に比べB−3層(2840〜2930年Bp)の変位量が大きいことを考え合わせると,2290〜2840年Bpの間に断層の活動した可能性がある。
・[24,000年Bp以降の活動と活動周期]
現地調査により直接判読できた活動時期のことなる断層活動(イベント)は,西側壁面で最低5回(F−1,F−3,F−4,F−5,F−7)東側壁面でも最低4回(f−1,f−3,f−4,f−5)であった。
しかし,不整合による地層の欠如や各地層の変位・変形状況からみて,これ以上のイベントがあったことは確実と考えられる。
最新イベントと一回前のイベントとの差から活動周期を考えた場合は,およそ1200〜1700年となる。
また今回のトレンチ調査で判明した地層の縦ずれ量から活動周期を推定した場合,最新イベントでのB−1層上部の変位を不明瞭ながら20p程度と見積もる(一回のイベントでの縦ずれ量 を20pと仮定する)と,D−2層(12500年Bp前後)の変位量120〜150p,AT火山灰層(24000年Bp)の変位量200〜220pから,その周期は千数百年〜二千数百年の可能性が考えられる。