(5)各断層の詳細についてのまとめ

@西側壁面

・F−1断層

主断層より鉛直上方〜右斜め上方(北上がり)に3〜4本認められ,最新の活動の軌跡であると考えられる。

A−2層(A−2l)最下部までを変位させ,A−2層上部(灰〜褐灰色を呈し,旧耕作土と考えられる礫混じりのシルト質細砂層:A−2u)に覆われるように観察される。

主断層〜B−1層最上部付近までは扁平な礫の配列や回転から比較的明瞭に条線を追うことができるが,A層に入ると礫の配列などは不明瞭になる。

B−1層最上部に分布する腐植土の不自然な堆積状況や変形(変形量としては小さいと思われる)は比較的明瞭に認められ,その影響はA−2l層の最下部におよんでいる。

・F−2断層

主断層より鉛直上方〜北上がりに1本延びるのが認められる。

B−1層堆積中に活動し,B−1層の下部を変位させているように,主に礫の配列と回転およびB−1層上部の変形に比べてB−1層下部および下位のB−3層の変位量が大きいことから観察されるが,主断層部から枝分かれすると明瞭なせん断面は認められず,またこの条線の終点をはっきりと押さえることができない不明瞭な断層である。

F−1断層が活動した際に枝分かれした可能性も考えられる。

・F−3断層

主断層より高角度で北上がりに1本延びる。

D−1層までを変位させB−3層に覆われるように観察されるが,下位のD−1層と上位のB−3層とは不整合により接していて,C層が欠如している為,C層堆積時期の活動が不明である。またこの断層は主断層へ収斂する。

・F−3'断層

西面W8付近の中部(スケッチに破線で示した断層)に認められる高角度で北上がりの不明瞭な断層。

D−1およびD−2層を明瞭に変位させており,断層に沿って扁平な礫の配列が認められるが下位のD−4層中にはせん断面,礫の回転やこの断層による明瞭な変位などが認められない。またこの断層を下方へ延長するとF5断層につながるようにみえる。

・F−4断層

西面W9付近下部(F−3断層すぐ北側)に認められる北上がりの高角度な正断層で,D−2層(紫黒色で腐植質な部分)を明瞭に変位させており,礫の配列(細〜中礫程度)などからも認められる。また上位のD−1層(F−4の延長部)には条線や地層の変位が認められないことから,D−1層に覆われるように観察される。またこの断層も主断層部へ収斂する。

・F−5断層

西面W9付近下部(F−4断層すぐ北側)に認められ,主断層より延びる北上がりの高角度な正断層でD−4層までを変位させD−3層に覆われるように観察される。

条線は礫の配列等により認められ,この断層付近も破砕帯となっている。

・F−6断層

西面W9付近下部(F−5断層すぐ北側)に認められ,主断層より延びる北上がりの高角度な正断層でD−4層堆積中または堆積後に活動したと考えられ,主断層よりD−4層途中までは明瞭に礫の配列や回転から条線を追うことができるがD−4層上面までは不明瞭となる。

F−5断層が活動した際に枝分かれした可能性がある。

・F−7断層

西面W9付近下部(F−6断層すぐ北側)に認められ,主断層より延びる北上がりの高角度な正断層で,この断層はF−6断層に合流しているが,AT火山灰を含むD−5及びD−4層の主断層を挟んだ変位量の差などからF−5,F−6断層とは活動時期が異なるものと考えられる。

・F−8,F−9断層

いずれも断層運動により副次的に発生した条線であると思われる。

西面F−8断層はD−1層の屈曲に伴うものと思われ,その影響はC−2層に及んでいる為,C−2層堆積中もしくは,堆積以降の断層の活動により発生したものと考えられる。西面F−9断層は,D−3層中の部分的に弱いせん断面が認められ,壁面の地層はその条線のすぐ南側でD−2層の上にD−3層が乗り上げるよう観察される。

この条線はB−2層まで続くように観察される為,B−2層堆積中もしくは,堆積以降の断層の活動により発生したものと考えられる。

A東側壁面

・f−1断層

主断層より右斜め上方(北上がり)に3〜4本認められ,最新の活動の軌跡であると思われる。

A−2層最下部(A−2 の下部)までを変位させ,A−2層上部(A−2u)に覆われるように観察される。

主断層〜A−2 の下部にかけて,扁平な礫の配列や回転から比較的明瞭に条線を追うことができ,A−2 層中で止まっていることから,A−2 層堆積中に活動したと考えることができる。

・f−2断層

主断層より弓なりに1本認められる。

B−1層堆積中に活動し,B−1層の下部を変位させているように,主に礫の配列と回転から観察されるが,F1断層から枝分かれしていることや明瞭なせん断面は認められないこと,主断層を挟んで地層(B−1層)の変位量が小さいことなどから,F1断層が活動した際に枝分かれした可能性がある。

・f−3断層

主断層より高角度で北上がりに1本延びる断層で,D−1層までを変位させC−1層に覆われる。

礫の配列と回転及びD−2層の変形状況から認められる。

・f−4断層

主断層より3本枝分かれする。

D−3層までを変位させD−2層に覆われているように観察され,断層の活動により引きずられたような礫の配列や回転と地層の乱れから認められる。

・f−5断層

東面E9付近下部に認められる北上がりの高角度な正断層で,主断層より1m程度北側にずれ1本伸びている。

D−4層までを変位させD−3層に覆われているように観察され,D−4層中の地層の乱れや,D−5層中のAT火山灰層の変位等から認められる。

・f−6断層

断層運動により副次的に発生した条線であると思われる。

扁平な礫(細〜中礫)の弱い配列やD−4,D−5層中の薄いシルト層の弱い変形が認められるがD−3層まで影響していない為,F5断層の活動時に発生した可能性がある。

B北側法面

・F−10断層

断層運動により副次的に発生した条線であると思われる。

面に沿って比較的大きな礫の長軸が配列しているのが認められる。

この条線はC−2層中にのみ認められる為,C−2層堆積中または堆積後で,C−1層堆積前の断層活動により発生したことが考えられる。