3−5−2 掘削方法

トレンチ調査における掘削方法を以下にまとめる。

1)発掘調査の手順

@ 発掘調査の境界を定める。

A トレンチを掘削する。

B トレンチ法面を手作業により平滑に整形する。

C 整形した法面に1mメッシュのグリッドを設ける。

D 法面の地質を詳細に観察し、正確にスケッチする。

E 法面に現れた腐植土、火山灰、考古学的遺物等の試料を採取する。

F 平板測量によりトレンチの平面図を作成する。

G トレンチを埋め戻し、用地を復旧する。

2)用地の設定

監督官の指示によって調査用地の境界を定め、杭打ちをする。また監督官の指示により、トレンチ掘削用地及び掘削残土置場等の作業用地を設定する。さらに、調査用地内に部外者が無断で立ち入ることがないように、ロープ、フェンス等で調査用地の外周を囲う。

3)トレンチの掘削

指定された掘削用地内に重機を用いて所定の規模、深さのトレンチを掘削する。掘削用地が水田、畑等の農耕地の場合は、まず耕土だけを薄く剥ぎ取り、下位の土層・地層と混合しないようにする。また、法面の傾斜はトレンチ内における作業の安全を考慮し、監督官と協議の上、適切な角度を決定する。

4)掘削残土の保管

掘削残土は雨により流出したり、崩壊の危険がないように、また同時に、トレンチの埋め戻しに支障がないように、ビニールシートを掛けるなどして適切に保管する。

5)排 水

トレンチ内の湧水は水中ポンプを用いて排水する。排水にあたっては、集水溝や水田への砂泥流入等の公害が発生しないように、万全を期す。

6)トレンチ法面の整形

掘削したトレンチ法面は、地層の詳細な観察ができるように、人力で余分な土石を除去し平滑に整形する。

7)グリッドの設置

整形したトレンチ法面には、観察およびスケッチの座標として、1mメッシュのグリッドを設ける。グリッドは以下の手順で設置する。

@トレンチ法面の上端に杭と板で柵を作る。

A板の水平距離は1mごとに釘を打つ。

Bトレンチ法面上にレベルを用いて基準となる水平線を求める。

C法面上部の1mごとの釘から水平線と直交する線を下ろし、これと法面基部との交点に杭を打ち、両者を水糸で結ぶ。

D水平線を基準として、各水糸に法面長1mごとに目印を取り付ける。

8)観察およびスケッチ

以下の点に留意して実施する。

@観察の範囲は整形したすべての法面とする。スケッチの範囲も原則として同様とするが、監督官の指示により一部を省略または簡略なスケッチとする場合がある。スケ  ッチの縮尺は原則として1/20縮尺とする。

A観察は肉眼で識別でき、かつ所定の縮尺でスケッチに表現できる精度の単層毎に地層を区分し、単層毎の層相・変形構造・堆積構造・地層境界の形状、層位関係、断層・亀裂、動植物遺体、液状化跡、考古遺物等について詳細に行う。

B観察結果を正確にスケッチすると共に、スケッチに注記をする。

C単層間の不整合、単層と断層との切られた・覆ったの関係、層準による変形の違い等を総合的に判断して、断層活動が生じた層準(イベント層準)を認定し、その層準をスケッチに表示する。

9)試料採取

監督官の指示に従い、各種分析用試料を採取する。採取した試料は採取トレンチ名、採取位置、試料番号等を明記したビニール袋に収納する。また、スケッチに試料採取位置と試料番号を記入する。

10)トレンチ平面図の作成

平板測量によりトレンチの平面図を作成する。トレンチの周囲5m以内の地形は、これも併せて表示する。縮尺は1/200程度、高さの精度は±5cmとする。

11)現場管理

調査用地の保全および安全管理を適切に行う。調査用地の周辺は、1)で述べたように、ロープやフェンス等を用いて仮囲いし、関係者以外の者が無断で立ち入らないようにする。また、降雨等により法面が崩壊する恐れがある場合には、法面をシートで覆い、崩壊を防ぐ。万一、災害・公害等が発生した場合は、直ちに関係機関に連絡すると共に、監督官に報告し、その指示を受けるものとする。

12)調査用地の復旧および撤収

トレンチの埋め戻しは、掘削残土を転圧して十分に突き固めながら慎重に行う。埋め戻し終了後、土地所有者から復旧完了の確認を得るものとする。復旧終了後は、直ちに仮設物・工事機器等を撤去する。