3−4−5 地質解釈

各種の分析結果を考慮して、各ボーリング地点における地質解釈をまとめると以下のとおりである。

◎[夙川−1]地点:甲陽断層の直近に選定した地点である。地表面よりGL−11.8mまでが花崗岩礫を多含する砂礫質の粗粒堆積物で構成される。全体的に締まりがゆるく、黄褐色系の色調を呈する。現在の夙川による河川堆積物であり、段丘相当層と考えられる。地層中に含まれる炭質物が少なく、地層の形成年代を決定する根拠が乏しい。表層より深度20m付近までを対象として、炭素同位体による年代測定を実施したが、いずれも段丘相当層に対応した結果が得られた。

GL−11.8m以深は、粗粒堆積物はよく締まり、細粒堆積物も硬質であり、青灰〜灰色系の色調を呈し、大阪層群に属する地層が分布すると推定される。しかし、全層において礫混じりの砂質堆積物で占められており、細粒土を対象に行った微化石総合分析においても海成を示す証拠が得られておらず、全層が陸成〜淡水域での堆積物であると判定される。また火山灰の検出もなかった。さらに、炭素同位体による年代測定においても、地質層準を特定できる有力な資料が得られなかった。したがって、調査地点が甲陽断層の直近であることを考慮すると、地層が著しく撹乱されているか、あるいは地層が大阪層群の下位の層準であるため、海成粘土が挟まれていない層準に対応している可能性があると考えられる。

◎[夙川−2]地点:甲陽断層の南側に選定した地点である。地表面よりGL−6.2mまでの表層部が段丘堆積相当層であると推定される。[夙川−1]地点と同様に、地層中に含まれる炭質物が少なく、地層の形成年代を決定する根拠が乏しいが、得られた年代測定値は一応それを指示する結果となっている。

GL−6.2m以深は、砂層と粘土層との比較的安定した互層によって構成されている。この地点においては、6枚の火山灰層が検出されており、そのうち、ピンク火山灰をはじめとする4枚についてほぼ同定することができた。図3−4−5に示すように、層相とあわせて火山灰分析と微化石総合調査結果によって得られた海成起源と思われる粘土層の関係より、Ma8〜Ma2までの地質層準が対比されると考えられる。しかし、この地点では、大阪層群で最も有効な鍵層で、海成粘土層のMa3に挟まれているアズキ火山灰が検出されていないが、それは当該層準がGL−113.2mに確認された小断層によって欠如しているものと判断される。