調査位置は図3−3−1に示すとおりである。
各測線における探査測線詳細図を図3−3−2、図3−3−3、図3−3−4、図3−3−5、図3−3−6に示す。
<P波探査>
夙川測線 西宮市泉町〜獅子ヶ口町
小林測線 宝塚市高司5丁目〜中野町
甲東園測線 西宮市上甲東園〜段上町
深江測線 神戸市東灘区深江本町1丁目〜芦屋市三条南町
<S波探査>
昆陽池測線 伊丹市西野1丁目
各探査測線における詳細な数量を以下にまとめて示す。
<夙川測線:P波バイブレーター探査>
・測線長 : 4000m
・発震点間隔 : 10m
・受震点間隔 : 20m
・総発震点数 : 355点
・総受震点数 : 197点
<小林測線:P波インパクター探査>
・測線長 : 1400m
・発震点間隔 : 5m
・受震点間隔 : 10m
・総発震点数 : 250点
・総受震点数 : 133点
<甲東園測線:P波インパクター探査>
・測線長 : 1600m
・発震点間隔 : 5m
・受震点間隔 : 10m
・総発震点数 : 320点
・総受震点数 : 162点
<深江測線:P波インパクター探査>
・測線長 : 1100m
・発震点間隔 : 5m
・受震点間隔 : 10m
・総発震点数 : 201点
・総受震点数 : 106点
<昆陽池測線:S波探査>
・測線長 : 150m
・発震点間隔 : 0.5m
・受震点間隔 : 1.0m
・総発震点数 : 300点
・総受震点数 : 150点
各探査測線における探査諸元をまとめると以下のとおりである。
<夙川測線>
・最大受震距離 : 2000m
・標準重合数 : 50重合
・震源 : バイブレーター(Y−2400)
・標準垂直重合数 : 10回
・受震器 : 速度型地震計(SENSOR SM−7B 9個/グループ 10Hz)
・探鉱機 : G−DAPS3
・サンプリング時間 : 3.0sec(コリレーション後)
・サンプリング間隔 : 2.0msec
・ローカット・フィルター : 12Hz(18dB/oct.)
・ハイカット・フィルター : 180Hz(72dB/oct.)
・収録チャンネル数 : 130ch(VP 0− 47)
120ch(VP 48−143)
144ch(VP146−336)
100ch(VP337−400)
・スィープ周波数 : 8Hz−120Hz
・スィープ時間長 : 20秒
<小林・甲東園・深江測線>
・最大受震距離 : 600m
・標準重合数 : 30重合
・震源 : 油圧インパクター(JMI−200)
・標準垂直重合数 : 10回
・受震器 : 速度型地震計(SENSOR SM−11 6個/グループ 30Hz)
・探鉱機 : BISON9060A
・サンプリング時間 : 2.0sec
・サンプリング間隔 : 1.0msec
・ローカット・フィルター : 40Hz(18dB/oct.)
・ハイカット・フィルター : 250Hz(72dB/oct.)
・収録チャンネル数 : 60ch
<昆陽池測線>
・最大受震距離 : 48m
・標準重合数 : 48重合
・震源 : 油圧式S波震源(自社開発)
・標準垂直重合数 : 10回
・受震器 : 速度型地震計(SENSOR SM−11 3個/グループ 30Hz)
・探鉱機 : BISON9048
・サンプリング時間 : 1.0sec
・サンプリング間隔 : 1.0msec
・ローカット・フィルター : 28Hz(18dB/oct.)
・ハイカット・フィルター : 250Hz(72dB/oct.)
・収録チャンネル数 : 48ch
@反射法地震探査の原理
反射法地震探査とは、異なる弾性波速度(P波・S波速度)をもつ2つの地層境界では、上方から入射した弾性波の一部が反射して地表に戻ってくる性質を利用して、地盤の地質構造を求める調査方法である。
図3−3−7に示すように、震源(↓)の近傍に地震計(□)を置いて起震すると、発生した弾性波は各地層境界で反射して、地表に戻ってきて地震計に記録される。図3−3−7のように、起震点・受震点を少しづつ移動しながらこの観測を繰り返すと、図3−3−8に示すような反射記録が得られる。
反射波は、地層境界の深さと各地層の弾性波速度で定まる時間遅れで地表に置いた地震計に戻るため、記録を並べると地層形状を再現することができる。図3−3−8の反射記録は、弾性波の各地層境界までの往復時間(往復走時と呼ぶ)を縦軸にして示しているが(時間断面:time section と呼ぶ)、各地層の弾性波速度が解かれば、縦軸を深度にした断面図を作ることができる(深度断面:depth section と呼ばれる)。
A反射波の振幅と地層の速度構造
反射波を表示する際の位相は通常は図3−3−9に示すように、低速度層から高速度層に波が入射する際に発生する反射波を右に立ち上がるように描き、黒く塗りつぶして示す。
反射波の振幅は、速度差が大きい境界面ほど大きくなり、使用できる波の周波数により分解能が異なる。この様子を図3−3−10、図3−3−11に示す。
BCMP重合法
実際の観測記録では、上述の1震源点・1受震点の観測方法ではノイズが多く、一般的には良好な反射断面を得ることができない。そこで、最近の反射法地震探査では次に述べるCMP重合法が用いられている。
震源点と受震点の中点が共通で、震央距離(震源点から受震点までの距離)が様々である反射記録の集まりを考える(CMPアンサンブル:図3−3−12)。この共通の中点を共通反射点(CMP;Common Middle Point)と呼ぶ。図3−3−8に示したような震央距離が零の記録を、normal timeの記録と呼ぶが、各地層の弾性波速度が解かれば、震央距離が零でない記録を補正して normal timeの記録に戻すことができる。
この補正を NMO補正(Normal Move Out correction)と呼んでいる。
CMP重合法における解析手順は、おおむね図3−3−13に示すとおりである。
1) 観測記録の中から、CMPを共有する記録を集める(CMP編集)。
2) CMPを共有する記録を用いて、各地層の弾性波速度を推定する(速度解析)。
3) 速度解析結果を用いて、各記録をNMO補正し normal time の記録に直す。
4) CMPを共有する記録を、すべて足し合わせて1本の記録にする(重合)。
このとき加え合わせる記録の数がm本であればm重合と呼ばれる。この処理を行うことにより反射波は強調され、ノイズは減衰する。とくにノイズがランダムであれば、√m倍のS/N比の向上が期待できる。