@[夙川−1]地点
甲陽断層の直近に選定した地点である。地表面よりGL−11.8mまでが花崗岩礫を多く含む砂礫質の粗粒堆積物で構成される。全体的に締まりがゆるく、黄褐色系の色調を呈する。現在の夙川による河川堆積物であり、段丘相当層と考えられる。GL−11.8m以深は、粗粒堆積物はよく締まり、細粒堆積物も硬質であり、青灰〜灰色系の色調を呈するので、大阪層群に属する地層と推定される。微化石分析より、全層が陸成〜淡水域での堆積物であると判定される。しかし、地質層序を確定するための海成粘土層や火山灰がまったく検出されず、地質年代情報がほとんど得られなかった。これは調査地点が甲陽断層の直近であり、断層運動によって地層が乱れ、海成粘土層を含まない大阪層群下部亜層群が地表付近に分布している可能性が考えられるが、それを特定するだけの情報は得られなかった。
A[夙川−2]地点
甲陽断層の南側に選定した地点である。地表面よりGL−6.2mまでの表層部が段丘堆積物であると推定される。GL−6.2m以深は、砂と粘土との比較的安定した互層で構成されている。ここでは6枚の火山灰層が検出されており、これらのうち、ピンク火山灰をはじめとする4枚について同定することができた。また、微化石分析によって検出された海成粘土層との層序関係より、Ma8〜Ma2までの地質層準に対比される。
なお、大阪層群における鍵層の一つのアズキ火山灰は、ボーリングコア観察で認められた小断層によって、一部の地層が欠如しているため、確認することができなかった。
また、こうしたボーリング調査結果や既存の地質資料をもとに、夙川測線の反射記録における地質層序の対比を行うと図2−3−2が得られる。
図に示すように、反射記録より西宮撓曲の北側において今まで指摘されていなかった断層が検出された。その断層の落差は約40mと推定され、大阪層群上部亜層群に属する地層を変形させていることが明らかとなった。しかし、その詳細な活動性に関しては不明である。